初競りでの“一番マグロ”は、“鮨銀座おのでら”を展開するオノデラグループと仲卸“やま幸”が競り落としましたが、一方、“すしざんまい”でお馴染みの“喜代村”ですが、競り落としたマグロは、150キロ大間産マグロで競り値は8000円でした。Facebookでコメントを出していましたが、「今年の初セリ1番鮪は買いませんでした。理由は石川能登地震と羽田衝突事故です。被害に遭われてる方がいる中で、マネーゲームですしざんまいで世間を騒がしたくないからです」と投稿していました。
初競りの豊洲市場の競り場に並んだマグロは、青森県(大間)から26本、北海道は55本、三重県が27本、千葉県26本、富山県6本と、それぞれ延縄漁や一本釣り漁で釣られたマグロが出荷されていました。“養殖マグロ”は、三重県から6本、和歌山県が3本、島根県から1本、長崎県が2本となっており、さらに海外輸入マグロでは、地中海に面するギリシャから6本のマグロが競り場に並びました。やはり、ご祝儀総相場とあり、二番手にキロ30万円の高値も出て、キロ1万以上の値をつけたマグロは37本にもなりました。
一本一本のマグロを釣り上げた荷主さんは、自分のマグロの競りの成り行きを緊張した面持ちで待ちます。
今回“一番マグロ”の1億円超えを仕留めたのは、青森県大間町の漁師歴30年の菊池さん(57歳)でした。12月31日のマグロ船に同乗していたのは息子さん。現在32歳になる息子さんは、高校卒業後から父親とマグロ釣りに出ていると言います。漁法は“延縄漁”で、今回は延縄の80本の針に餌を付けて海中に流し、そのうちの一針に238キロの巨大マグロがかかったということです。釣れた魚場は、青森県は下北半島の尻屋崎沖と言いますから、北海道函館市と青森県大間町間の津軽海峡を挟んだ海域と言うより、ほぼ東太平洋側の外海と言えるのでしょう。
菊池さんは「一番マグロに選ばれたのも、値段にもびっくり。去年、一昨年と二番だったので念願かなって嬉しい」と笑顔でメデイアに答えています。ベテラン漁師の父と頼もしい息子と、その家族の笑顔が見えてきそうです。
私は津軽海峡を挟んだ大間町の反対側の北海道函館市戸井町に住み、遠くに霞んだ下北半島を見て育ちましたので、北国の冬の海の厳しさを知っています。
よく“板子一枚下は地獄”と言いますが、まさしく冬の海の船底の下は、身も凍らす荒れ狂う海。海に落ちたり、船が浸水して沈んだりしたら容易に生還できるものではありません。漁師たちにとって、マグロを獲りに港を出て外海へ向かうことは、命がけになります。家族も同じで、夫、息子、父親の無事を祈り陸で帰りを待つのです。
さらに、漁師たちの皆が皆がマグロを釣れるわけでもなく、そこには表に出てこない切ない漁師の家族の物語もたくさんあります。
私が幼少の頃、私の父は漁が厳しくなった戸井を離れ出稼ぎに行くようになりました。やがて家族皆が戸井から引っ越しました。
2024年を迎え、全国津々浦々で漁をされる漁師たちの安全と、そのご家族の平安を祈ります。