ニューヨークで経験することの一つは、警察官がとても愛嬌があるということですね。真昼間の喧騒極まるマンハッタン・タイムズスクエアで、立ち廻りの警察官が一際目を引いたのした。アジア系の警察官は帽子を脱いでいて、髪は一部緑に染め後ろで髪を結んでいるのでした。その彼に「写真を一緒に撮っていいですか?」と尋ねてみると、彼は快く受け入れ、さらに見事なポーズを取って、私とのツーショットにおさまってくれました。
今度は、イーストリバー川中にある全長3.2キロのルーズベルト島へ行った時のことでした。マンハッタンとルースベルト島の間にはロープウェイの“ルーズベルトアイランド・トラム”が15分ごとに運行されています。ゴンドラから一望できるニューヨークの景色は圧巻そのものです。私がマンハッタン行きのつぎの便をトラムの駅で待つ間、近くにいた警察官にトイレの場所を尋ねました。そのヒスパニック系の女性警察官は、側にいた係員に話をして鍵を受け取り私をトイレまで案内してくれ、しかも自分で男性トイレの戸を開けてくれたのでした。私は戻ってきて彼女に感謝の言葉を述べ、予期せぬその親切に感動したので、「写真を一緒に撮っていいですか?」と聞いてみました。彼女は喜んで承諾し、付けていたマスクを外したのですが、その素顔はアッと驚くほど濃いの口紅をしていました。写真に収まった彼女の満面の笑顔は美しいものでした。
また、あちこちの地下鉄駅でも最低二人組で警察官が警備をしています。時には電車内にも乗り込んできます。乗り込んだ電車内で頻繁に遭遇するのが、自転車、電動キックボード、スケードボード、またサーフィンボードまで持ち込んだ利用者たちです。そして大きな犬まで連れています。
マンハッタンへ向かう朝のラッシュ時でしたが、駅内に電車が入って来た時、一台の車両だけが空席のようだったので入ってみると、車内いっぱいに異臭が放されていました。車内の隅には大きな荷物を抱えた浮浪者が下を向いたまま動かずに座っていました。また酔っ払いでしょうか、席いっぱいに大の字に横になって眠っている人もいます。
地下鉄を利用すると驚いたり楽しめることの一つに、駅内や車内でのさまざまなパフォーマーや、説教者(?)、ファンドレーザたちとの出会いがあることです。独唱する人や、ギターやサクソフォン奏者のロックからジャズの演奏、また二胡(にこ・弦楽器で2本の弦を弓で弾く)を奏でる中国人もいます。そして電車内に乗り込んできては大声で叫んでは寄付金を募る者や、数人で踊りだすグループまでいます。彼らは次から次と路線を変えて新たな車内に乗り込んでいきます。
こうしてすべてが生きていくための人々の智慧や方法であって、ニューヨークならではの生活風景なのかも知れません。