新しい年を迎え、COVID-19の影響が懸念される中、東京豊洲卸売市場では“初競り”が、大変な賑わいをもって行われました。2022年1月5日の市場明けの初競りは、青森県大間港に水揚げされた211キロのマグロが、1688万円(14万5514ドル)で落札さました。このマグロが今年の“一番マグロ”となります。1キロ当たりの価格は、8万円(690ドル)になり、この価格は、総額では昨年より396万円下落していることになります。
競り落とした業者は、水産仲卸業者の“やま幸(ゆき)”と、外食産業の“小野寺グループ”の共同によるものです。昨年と今年に続く2年連続となりました。
豊洲卸売市場のマグロ初競りは、マグロを取り扱う業者や寿司屋さんの名声の獲得、威信、面子にもかかわるもので、損得を度外視してかなり熱くなる場面が毎年展開されてきました。こうして競り落とされた価格は、“ご祝儀相場”となり、マグロも縁起物とされます。もちろん、高額となっても一番マグロを獲得すれば、連日メディアも大きく取り上げてくれることで、落札者側にとっては宣伝広告にもなると言うわけです。
2008年から2015年にかけて、寿司レストランチェーン「すしざんまい」で知られる“喜代村”の木村清氏と、「板前寿司」を所有する香港の“Taste of Japanグループ”との間で熱い争奪戦が繰り広げられてきましたが、競り値が大きく上昇することで、香港業者が撤退し木村氏の独壇場となりました。しかし、2017年から新たなライバルとなる仲卸業者のやま幸が登場し競り合いに参入することで、またも価格は徐々に上昇していきます。
2019年には、1本のマグロが3億3360万円(310万ドル・当時)まで跳ね上がり、史上最高額で木村氏が競り落としました。その価格は未だに破れらておりません。2番目に高い価格は、2020年の1億9320万円(180万ドル・当時)となります。
木村氏は、昨年の2021年の一番マグロも逃しているのですが、「閉鎖的な空間、混雑した場所、密着した場を避けるために、自店でマグロの解体ショーを行うのは難しい」と説明しています。COVID-19による外食産業へのダメージは大きく価格低迷にも繋がっていると言えるでしょう。
ちなみに、現在の青森県産生鮮マグロの市場価格は、通常1キロあたり1万7000円から2万円(146ドルから172ドル)と言われていて、冬の荒海に漁に出る漁師たちにとっても、充分に見返りのあった価格と言えるでしょう。