今年もあとわずかとなり、この時期は贈り物をしたりされたりします。今日は贈り物の思い出について話したいと思います。
マカデミアナッツ
年末の話ではありませんが、以前オーストラリアへ出かけた際にハワイ土産に「マカデミアナッツ」を持って行きました。その土産をオーストラリアで渡すと、渡された人はニッコリ笑って、「マカデミアナッツはオーストラリアからハワイへ行ったんだよ」って言われてこちらはびっくり。昔イギリス人が航海した際にハワイへ持ってきて植えたのでしょう。そうとは知らず、ハワイ土産と言って、マカデミアナッツを持って行ったことをちょっとばかり恥ずかしく思いました。
ツバメの巣
今年頂いた贈り物の中に「ツバメの巣」があり、これは広東料理ではかなり高級な食材のようで、フカヒレのようにスープなどに使われるとか。この食用の巣は鳥の唾液で作られるもので、日本のような所の巣では泥などが混じっていて食用には向かないそうですが、東南アジアではこの鳥が急斜面や洞穴に作る習性を利用して、人工的にこの鳥の巣ができる施設がたくさんあるとのこと。「鳥の巣」と聞いただけで、食欲が湧いてきません。「食べたくないなら、あげちゃってもいいよ」って言われているので、どうしようかと今は思案中です。
母親のクッキー
妻の母親が存命だった頃、毎年クリスマスクッキーが送られてきました。ある年のこと、このクッキーとともに、衣類や耳飾りなどたくさんの贈り物が箱の中に入っていました。まるでこれが最後とでも言わんばかりの量でしたが、妻はその一つ一つの贈り物を手にしながら、寂しそうでした。近い将来、こうした贈り物ができなくなるって母親も妻も感じているようでした。
その頃の義理の母親の指先は曲がってしまっていて、クッキーを作る材料の調合やら、道具の出し入れ、いろんなクッキーの形を作るのにはさぞかし労力を要したと思われます。まさにこれが最後と心を込めたクッキーが一つ一つ包装され、崩れないように丁寧に箱にいれてありました。それが海を渡って、ハワイへやってきたことを思うと無駄にはできないと一つ一つゆっくり味わって食べました。
そのうちにかっての母親らしからぬ奇妙な言動をとるようになってきました。一旦外出すると外出理由を忘れてしまったり、自分の家への帰り道を忘れて、長時間近所を彷徨したりし始めたので、それを聞いた妻は意を決して休職を依頼し、母親の元へ駆けつけました。
それから、いつまで続くかわからない母親との共同生活が始まったのですが、毎年この時期になると、あのたくさんクッキーが詰められた贈り物が忘れられません。贈り物にはどんなものであっても、あげる人の気持ちがこもっているはずです。この時期、人にあげたりもらったりしますが、いただいた物には心から感謝したいものです。
とどけMahalo! アメリカ本土便り No.117
大井貞二(おおいさだじ)
1988年にハワイに移住。地元の私立校で日本語を教える。その後、ハワイ大学大学院を経て、ハワイパシフック大学(HPU)にて世界中からやってくる学生に日本語を教え、最近退職。現在アメリカ本土に居住。
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