いよいよ移動日
テキサスの古い港町ガルベストンを立ち去る日が来ました。その日の朝、簡単な朝食を終えて、片付けをすると、台所も冷蔵庫も文字通り空になりました。野菜、果物、そして飲み物などを使い切ったのです。一週間前くらいから余計なものは買わない。そして、配分を考え、計画的に買ったものは使い切るようにしました。旅行も何度もしていると段々、こうしたことがうまくできるようになり、不要な物を買わないようにしたり、計画的な買い物と調理ができるようになるって思います。
多分私たちと同じように冬にフロリダなど暖かい所へ移動している人達はこうした何が必要で、どのくらい必要かなどを考えて行動しているのだろうと思います。それでも退却日には大慌てで、多くの物を無駄にしたり、ごみにしたりしているかもしれません。そんなことを思っていると、世間ではいつも移動している人がいますね。興行などで地方を巡業する人達や、行商をしている人、キャンプなどよく野営する人たちなどは準備は重要な仕事だし、物を増やさないことが大切に思えます。そして目的を果たし終えた時には荷物が少なくなっているのが理想です。
思い出す浅草での出来事
ちょっと前のことですが、日本へ帰国し、東京の上野駅近くのホテルに夜更けにチェックインしました。そして夜食をと上野のアメ横辺りを歩いていると、お菓子を売っている人が人通りもなく暇そうにしていていました。そこを通り過ぎようとすると、お菓子2袋千円!と言います。お値打ちかもしれませんが、まだ来たばかり、荷物を増やしたくもないですが、時差ボケもあってボーっとその人の話を聞いていると、「ええぃ、3袋千円!」。それでもボーっとしているとやがて4袋に増え、とうとう「5袋千円だ!」、と投げ捨てるように放った言葉につられて、欲しくもないお菓子を買ってしまいました。
得をしたのか、損をしたのか?
買う気が全然ない者にそのお菓子を売ったのですから、その人は商売人としては成功でした。でも後々、ずっとその人は得したのかどうか考えていました。本当はその人は持って帰る商品を少なくしたかったのではないかって思うのです。たとえ、損をしても商売人として持ってきた物をまた片付けて、車に積んで、また持ってくるより、「売り切って」しまいたかったのでは?って思いました。
旅行者の私も退却日に荷物を少なくしたくなる心境に似ています。あの露天商の人も私と全く同じ心境だったのでしょう。自分の旅行の経験からそんな風に思うので、行商などの人達の売れ残りに同情します。
ですから、ウイスコンシンのファーマーズマーケットとか、日本の駅とかデパートとか露店で売っている人達が手持無沙汰にしていると、欲しくなくても買ってしまうことがあります。旅行で転々とする私も露天商の人もどこか似ています。
とどけMahalo! アメリカ本土便り No.123
大井貞二(おおいさだじ)
1988年にハワイに移住。地元の私立校で日本語を教える。その後、ハワイ大学大学院を経て、ハワイパシフック大学(HPU)にて世界中からやってくる学生に日本語を教え、最近退職。現在アメリカ本土に居住。
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