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コラム とどけMahalo! アメリカ本土便り

ウイスコンシンで独り言 毎日を生き生きと過ごす

 私の友人のYさんは80歳の現役の書道の先生で、ご自分の書道教室で子供を中心に教えられています。この十年ほどは書道から絵画にも興味を広げられ、ご自分の個展などを開かれています。それと同時に外国人にも長く書道を教えてこられました。

 外国人に書道を教えたいから、書道を通して英語を習おうとされたのかはわかりませんが、書道から絵画、そして英会話とお忙しい日々を過ごされています。近くの英語圏から来た友人に頼み、英会話教室まで運営されています。得意なことで子供達や近所の大人と接して、忙しい毎日を過ごされているYさん、会う度に新しいことに挑戦されているようで、その活力に感心させられます。

会話教室での出来事

 この教室に通う人の中にはかってはビジネスマンとして、ニューヨークを中心に精力的に仕事をした方もいました。ところが、引退した今では、かっての精彩は影をひそめ、歩く姿もよたよたで姿勢もわるく、クラスでも居眠りしたり、声もぼそぼそ、全く活気がありません。

 一体何のために英会話教室に通うか意味が分からないような感じでしたが、ある日のこと、ニューヨークの経験をこの方にしてもらうこととなりました。するとどうでしょう。今まで生気のなかったこのビジネスマン、あたかも現役に戻ったかのように背筋を伸ばし、明るく元気にはっきりした声で生き生きと黒板に地図を書いたり、身振り手振りを交えて、まるで別人のような話しぶりに教室の一同はただ唖然としました。

火事場の馬鹿力

 養老院のお年寄りで腰が曲がり、歩行もままならない人が、一旦ピアノの前に座ると急に姿勢を正し、とてもお年寄りとは思えないような、素晴らしい演奏をする動画やそうした似たような話を聞くことがあります。日本では「火事場の馬鹿力」と言って、何かに集中すると思わぬ力がでることを言いますが、精神力、心の持ちようが大切なことを説いています。似たような話を「死すべき定め(原題Being mortal)」の本の中で痴呆症の老人で人の手を借りないと何もできなくなった人が動物と接すると、動物との触れ合いから急に元気を取り戻し、顔の表情も変わり、生き生きしてくる実例がいくつも書かれていました。

今年の抱負

 こんないつも何かを探し求めているYさんやら、Yさんの英会話教室でのかってのビジネスマン。そして「死すべき定め」に出てくる老人が急に生き生きとすることから、人間はいつも何かをしていないといけないし、自分の精神状態が大切であることを教えている気がします。

 今年あなたは何をしますか? どう過ごしたいと思ってますか? 私は定年退職して、自分の殻にこもり単調な毎日になりがちですが、いつも何かに興味を持っていたいと思っています。

とどけMahalo! アメリカ本土便り No.118

大井貞二(おおいさだじ)

1988年にハワイに移住。地元の私立校で日本語を教える。その後、ハワイ大学大学院を経て、ハワイパシフック大学(HPU)にて世界中からやってくる学生に日本語を教え、最近退職。現在アメリカ本土に居住。

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