MOCHIアイス「ミカワヤ」を巡る旅 1958-2017(1)
ミカワヤにゆかりのある場所で、リトルトーキョーのお店の他にもう1箇所行ってみたかったのが「ハシモト家の墓」だった。ロサンゼルスに来る前、ハシモト家の親戚で岐阜県在住の友人、広瀬さんから、創業者夫妻の墓がロサンゼルスにあることを聞いていたのだが、ずっと昔家に郵送されてきたという墓の写真も送ってもらっていた。その写真は1958年にコウロクさんが埋葬された時のもののようだった。当の広瀬さんはその墓に行ったことがなく、ロサンゼルスにあるのは間違いないが、どの墓地なのかは分からないという。
グーグルで「ロサンゼルス 日系人 墓地」と入力して検索してみたところ「エバーグリーン墓地」という名の墓地が出てきた。メモリアルデーに日系人の戦没者追悼式が行われたという地元新聞の記事や、そこへ行ったという人のブログに「日系人のお墓がたくさんある」と書かれているのを見つけた。これらの記事にある墓地の画像をみると、背景のヤシの木の感じが広瀬さんが送ってくれた古い写真に似ていた。ハシモト家の墓はおそらくエバーグリーン墓地にあるのだろう。私は早速車を借り、ボイルハイツにある墓地へ行ってみた。
日本のお寺にあるような墓地を想像していたが大間違いで、エバーグリーン墓地はとにかく広大だった。敷地内にある墓の総数はおそらく数万基。最初は歩きながら1基ずつ目で見て探そうと思ったが、日系人の墓だけでも1万基以上はあるような気がする。しかも墓と墓の間の幅が数十センチくらいしかなく、大きめのドミノが永遠に並んでいるような光景だった。歩きながら見ていたら目がしばしばしてきたので、オフィスに行って聞いてみることにした。
オフィスの人にハシモト氏夫妻の名前と出身地を伝え、墓を探してもらったところ、すぐに見つかった。最初からこうすればよかったのである。敷地内の地図で墓のある場所に印をつけてもらって行ってみたら、広瀬さんが送ってくれた写真で見た通りのハシモト家の墓と背景があった。墓石には出身地、生年、没年、戒名が書かれていて、ハシモト夫妻の遺影がはめ込まれていた。早速お墓に手を合わせ「もちアイスはほぼ、私の主食」ということを報告。ハシモト一家は私とは何のつながりもない上、会ったこともない故人なのだけれど、こんな風に人との縁がつながる場合もあるのだ。広瀬家とハシモト家をつなぐ使者として導かれて来たような、珍しい体験をさせてもらった。
楽園綺譚