トミー・リー・ジョーンズが宇宙人に扮して缶コーヒーを、ジャン・レノはドラえもんに扮して車を、と映画俳優を起用したコマーシャルも多い中、かつて“アダムス・ファミリー2”のキャラクターが出演したホンダの宣伝は特に異彩を放っていた。
丘の上の不気味な屋敷に住むアダムス一家。家長のゴメズとその妻で魔女の祖先を持つモーティシア、長女ウェンズデー、長男パグズリーら子供達、ゴメズの兄フェスター、執事のラーチや右手だけの幼馴染ハンド(英語版ではシング)と大所帯、共通するのは皆とてもエキセントリックで怪奇な点。さらに次男ピューパートが誕生し一家に加わるが、三人も子供は要らないと不満に思う長女と長男により危うく何度も殺されかけ、見兼ねた夫妻はデビーと名乗るベビーシッターを雇う。しかし、フェスターが彼女に一目惚れをした事で一家は騒動に巻き込まれていく。
これだけ超個性派の登場人物だらけでユーモアに満ちたゴシック風ダークファンタジーは他にないだろう。ゴメズとモーティシア夫妻の情熱的すぎるやりとりを見ているだけでも面白く、劇中のアクロバットなダンスシーンはかなりの見どころ。何から何まで非常識で奇天烈な価値観を共有する一家の中において、一番のお気に入りは長女ウェンズデー。子供らしい純粋さは一切無く、冷酷かつ聡明。普段は無口だが一度口を開くと強烈なパンチの効いた皮肉が炸裂、痛快でたまらないのだ。物語の要はフェスターとデビーにも関わらず、サマーキャンプに参加せざる得なくなったウェンズデーとパグズリーが起こす“事件”がクライマックスにすら思えてしまう。そんな彼女を主人公としたドラマシリーズが、なんと“シザーハンズ”や“ナイトメアー・ビフォア・クリスマス”で有名なティム・バートン監督が制作、近日Netflixで配信予定!こちらも楽しそうだ。
ちなみにコマーシャルに関しては、トミー・リー・ジョーンズのシリーズはこれからもぜひ続いて欲しいと願っている。
●加西 来夏 (かさい らいか)
映画は年間100本以上視聴、訪問国は39ヵ国~の旅する映画ラヴァー/ゴメズ役の俳優さんが亡くなっていたと知りショックでした。あの色気と陽気さ、ハマり役だったと思います。
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