有名旅行ガイドブック『地球の歩き方』は分厚い。重たいので、必要な情報が載ったページだけをちぎり、中の地図と、コンパスとを交互ににらめっこして旅をしていた。
1950年代。フォレスト・ガンプは背骨が歪曲しているせいで脚に補助器具をつけて歩行しなければならず、知能指数が平均より低いこともあり周囲の無神経な人から馬鹿にされていた。しかし、母からの深い愛情と、唯一の友人ジェニーの支えもあり、フォレストは純粋に、真っすぐに成長していく。走るのが得意になっていた彼は、大学ではフットボールで大活躍、その後ベトナム戦争に従軍し、様々な人と出会い、歴史的事件にも遭遇する―いつも、どこにいても大事なジェニーを想いながら。そんな自らの半生をバス停で乗車待ちをしている人々に語りかけていると、ある優しい奇蹟が訪れて…。
1995年アカデミー作品賞受賞。当時は子供心に「こんな荒唐無稽な話!」とやや呆れた思いと、主人公のあまりの純粋さに反感を持っていたが、今、真逆の感想を抱いている。ストーリーはアメリカ激動の歴史をユーモアを交えてうまく取り入れていて、そうか、こんな流れだったかと勉強になる上、大統領(と時の人)暗殺率にあらためて驚く。そして何より、フォレストのピュアさが心に刺さる。幼い頃、いじめっ子に追いかけられ「走って、走るのよ!」とジェニーに言われた通りひたむきに走っていくスタイルは大人になっても変わらず、真っすぐに走り続けること=生きることで結果的には周りも自分もハッピーになる。その様に自然と涙がこぼれた。近年ITのめざましい進歩により便利になった反面、情報過多かつ複雑な世の中になってしまったと感じるが、そんな状況に振り回されず自分の信念を失わない彼のようにいられたら、と切に願う。
車で旅をしてもカーナビゲーションをつけないのでやはり道に迷い、その時は土産屋に寄って尋ねる。グーグルに聞くより人とのやりとりが好きだ。アナログ的な生き方は捨てずにいたい。
●加西 来夏 (かさい らいか)
映画は年間100本以上視聴、訪問国は39ヵ国~の旅する映画ラヴァー/アカデミー賞といえば?と思い浮かぶのが本作。邦題のサブタイトル“一期一会“という言葉がやたらと流行ったのも懐かしいです。
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