「神を信じるか?」。タクシー運転手に尋ねられ、答えに少々戸惑った。日本ならまだしも、何せそこはキリスト生誕地とされるベツレヘムだったからだ。
ロサンゼルスでナイトクラブ“LUX”を経営するルシファー・モーニングスターは、ハンサムで長身な上に歌もピアノも上手く魅惑的、男性も女性も一目で彼の虜になってしまう。が、その正体は遥か昔、全知全能の神である父に謀反を企てた堕天使ルシファー。地獄の統治を強いられていたものの、魔物の手下メイズと共に反抗の意味も込め休暇を取りに地上へやって来たのだ。人間の欲望を眺め自由気ままに楽しんでいたところ、ある事件をきっかけに美しい女性刑事クロエと出会い、捜査に協力していく中で自身の変化と向き合わざる得なくなっていく―。
Lovely!イギリス英語を喋るルシファー流に一言で表すなら、そう!クロエとの至高のラブストーリーであると同時に、こじれていた家族関係の修復、人間たちとの交流を経て自分が何をすべきなのかを手探りで見つけて行く、いわば壮大な自分探しの物語だ。度々心理カウンセラー・リンダにセラピーを受けるのだが、彼女の指摘がどれも的確で、なるほどとつい自分に照らし合わせてしまう。さらに、神が創造したこの世界で天使も含め“自由意志”は存在するのか、それとも全て神の計画で予め決められた運命なのか…哲学的な要素もストーリーの根底となっており、ありふれたラブコメではない。また、死後に地獄行きを決めるのは人間自身の罪の意識、罪悪感なのだという考え方もとても気に入っている。とにかく、とりとめのない賛辞しか浮かばないほどロマンチックでユーモアに溢れた作品。自分を素直にさらけ出し、大事な人との絆をより大切にしたいと思えた。
悩んだ挙句、件の運転手に正直に無宗教だと伝えると、そうか、日本人は多いよな、と受け止めてくれて嬉しかった。信仰は無くてもどの宗教も尊重し、ニュートラルな状態でエンターテイメントや世界遺産を楽しんでいる。
●加西 来夏 (かさい らいか)
映画は年間100本以上視聴、訪問国は39ヵ国~の旅する映画ラヴァー/所々涙腺も刺激され、もう見るのは4周目。自分史上ベスト3に入るドラマです。
シェアする