実に32年ぶりの1ドル=150円台を突破、物凄い円安である。初めてL.A.に行った12年前は、1ドル=81円程度で躊躇せずに食事ができ、お土産も余裕で買えた記憶がある。
そこにハリウッドがあるから―映画を愛する者として、L.A.を訪れるのは儀式的な意味があった。特にリヴァー・フェニックスのファンなので、彼の最期の地、クラブ“ザ・ヴァイパー・ルーム”への巡礼は絶対外せなかったし、マリリン・モンローが一時期住んでいたルーズベルト・ホテルや、“ターミネーター”が未来からやって来るシーンで有名なグリフィス天文台も垂涎の聖地である。街を歩いているだけで映画や出演者ゆかりの場所に出会えるなんて・・・グリフィス天文台から見下ろすL.A.はオレンジ色に広がり、懐かしいような切なくなるような美しさだった。
以前も触れた“セブン”の撮影地、アレキサンドリアホテルから近く安かったのでステイ・オン・メイン・ホテルに泊まった。ポップな配色のインテリアが可愛らしいなと思ったが、後にレビューを見ると1980年代に発生した連続殺人事件の犯人リチャード・ラミレスの常宿だった、開業以来不審死が相次ぐ等、なかなか物騒な宿だと知った。数年後、自分と似たような一人旅の女性が不可解な死を遂げ世界的に有名になり、ドラマシリーズ“アメリカン・ホラー・ストーリー”シーズン5のモデルにもなっている。泊まった宿が後にドラマの舞台になるとは、さすがL.A.と思ってしまった。
“フォレスト・ガンプ”をテーマにしたシーフードレストラン“ババ・ガンプ”に行くと満員で入れず、代わりに同じくサンタモニカにある“The Lobster”で少し贅沢にロブスターや牡蠣も食べてみたが、実際感動したのは「本場の」ファストフードだった。カールスジュニアのバーガーもエル・ポヨ・ロコのチキンも、信じられないくらい美味しい!
L.A.はずっと変わらない魅力で自分の心に存在している。円安が落ち着くのを待って再訪したい。
●加西 来夏 (かさい らいか)
訪問国は39ヵ国、好きな言葉は「世界は驚きと奇跡に満ちている」/個人的事情により今回で旅行コラム終了となります。また気軽に旅に出られる日を切に願って。
(日刊サン 2022.10.28)