ローマを訪れたのは彫刻家ベルニーニ作“聖テレジアの法悦”が見たかったから、と前回述べたがイタリアでは各都市それぞれに「これ!」という明確な目的があった。
無礼とみなした人間を食べてしまう、猟奇殺人犯レクター博士ー好きな映画のひとつ“羊たちの沈黙”でアンソニー・ホプキンスが怪演、続編の“ハンニバル”では逃亡中、フィレンツェでダンテの研究をしている設定だった。そのロケ地だからが半分、あとの半分はウフィツィ美術館にあるボッティチェリ作の名画“プリマヴェーラ”が見たかったら、というのがフィレンツェ行きの理由だった。が、大誤算。まず美術館は朝早くから長蛇の列、やっと入場出来たと思ったら憧れの“プリマヴェーラ”は人だかりでゆっくり鑑賞出来ず、美術館を出るにもひと苦労した挙句、せっかくだから観光名所ドゥオーモに登って街の景色を一望しよう!とチケットを買い求めると再び長蛇の列…街並みから映画の雰囲気は十分楽しめたが、ローマから電車での日帰りは無謀だったと猛省した。
それから、今は水位が下がり干上がりが懸念されているヴェネツィア。華やかな仮面と衣装を纏った人々が闊歩する冬のカーニバル時期はハイ・シーズンのため断念し秋に訪れたが、昼間のサン・マルコ広場やリアルト橋から水面に映る夜景を眺めるだけでも素敵で、“007カジノ・ロワイヤル”や“ツーリスト”で見た光景が広がっているなぁ、と感激。
そしてやはり外せないのは、透明度の高い美しい海!本土で一番良さそうだったのがアマルフィで、ナポリから高速船で移動し、陸に近づくにつれ断崖絶崖に築かれた美しい街並みが見えて来た際には、さすが世界遺産なだけあるなと感じた。ビーチは白い砂浜ではなく玉砂利だったのが意外だったが、教会巡りや街歩きも楽しく、名物のジェラートはピスタチオ味がおすすめ。
彫刻や名画、世界遺産が豊富、数々の映画も撮影されワインも食事も抜群!何でも揃っているといっても過言ではないイタリア。ヨーロッパへ行くなら一度はぜひ。
●加西 来夏 (かさい らいか)
映画は年間100本以上視聴、訪問国は39ヵ国〜の旅する映画ラヴァー/フィレンツェへ向かう列車の中で、鍵が壊れたのかトイレに閉じ込められました。必死で叫んでいると見回りの車掌さんが外から開けてくれて「たまにあるんだよね~」とのこと。どうぞご注意を。
(日刊サン 2021.08.27)