イグアナなのに海に潜って海藻や蟹を食べる“ウミイグアナ”という種が存在する。エクアドルのガラパゴス諸島にのみ生息し、他にもこの地域で独自の進化を遂げた種が多々おり訪れてみたいが、実は日本にも“東洋のガラパゴス”がある。
2011年に世界自然遺産に登録された頃、丁度ダイビングにはまっていたので小笠原諸島周辺は海の透明度が抜群、その青さは“ボニンブルー”と呼ばれ、希少種のシロワニ(サメ)や、ハシナガイルカ、アオウミガメなど大物が比較的簡単に見られると知っていた。東京から1000km、交通手段は船のみで24時間もかかるため躊躇っていたが、乗船してしまえば甲板で夕陽や星空を眺め、ご飯を食べて寝たらあっという間に到着。父島からさらに船で20分ほど行くと南島があり、日本最大のアオウミガメの繁殖地でところどころ砂地にカメの足跡があった。入り江もサラサラの白砂もとにかく美しく、久しぶりに外国へ着たのかと脳が錯覚を起こしてしまった。
ダイビング中には通常オレンジ色の“ファインディング・ニモ”に登場するクマノミの黒バージョン、白っぽい体に黒い斑点がぽつぽつと広がるアジアコショウダイなど珍しい魚類がいて並べるとキリがないが、一番嬉しかったのは以前八丈島で見逃した、着物の友禅染めに似た柄でのチョウチョウウオの一種、ユウゼンがたくさんいたこと!
散々潜って魚を見ていると癒されると同時に、無性に食べたくなるのは野生の本能が残っている証拠だろうか。父島の食材をふんだんに使った料理のある“洋風居酒屋CHARA”で近海のキハダマグロやソデイカ、ギンガメアジの刺身やチギ(バラハタ)の天ぷらなどを堪能。また、中華料理屋“海遊”では高級魚アカバ(アカハタ)が丸々入ったラーメンが、出汁がよく効いて美味しかった。
父島と本土の定期便“おがさわら丸”は6日に1便のため、島での最短の滞在は3泊4日になる。とにかく毎日海三昧だったので海メインにはなってしまうが、まだまだ父島の魅力は尽きない。
●加西 来夏 (かさい らいか)
訪問国は39ヵ国、好きな言葉は「世界は驚きと奇跡に満ちている」/長時間甲板で太平洋を眺めてビールを飲んでいたら、島に着く前に既にすごい日焼けをしてしまいました。暑くても薄い長袖がおすすめです。
(日刊サン 2022.8.26)