世界的に著名な作家、村上春樹が滞在し“遠い太鼓”という旅行記にも登場するミコノス島。日本ではハネムーン向けにサントリーニ島とのセットツアーがたくさん販売されていることもあり、その知名度は非常に高い。
島のシンボル、白い壁に茅葺き屋根の風車は、中心地ミコノスタウンを見下ろすカト・ミリの丘にある。おそらく一番の観光名所だろうが、もっと大きいものだと勝手に思い込んでいたので少し拍子抜けしたものの、夕焼け時はさすがの風格。また、反対側のオールドポートにあるagios vasilios教会付近からは湾も含めて一望でき、これぞザ・ミコノスという構図で撮れるのでおすすめ。
街自体はコンパクトながら、昼夜問わず散策が楽しい。日中は、あちこちの日陰で気持ちよさそうに寝ている猫を眺めて癒され、独特な灰色の石畳の小路には可愛らしいお土産屋さんが並んでいる。夜になると小洒落たタヴェルナ(ギリシャ料理レストラン)が活気づく。“Nikos Taverna”で、メインディッシュを迷い店員に聞いたところ、普通は値段が高めの料理を勧められそうなものだが「これがいいと思うよ」とリーズナブルな魚介クリームパスタを勧められ、本当に美味しかった。そんな良心的な人が多いのも魅力だ。
そして、絶対に外せないのが“パラダイスビーチ”。透明度100%と表現したくなる海の美しさもさることながらクラブも常設され、ヌーディストやゲイの方、誰でも自由に満喫できるまさにパラダイスな雰囲気なのだ。沖の方には個人所有と思われる高級クルーズ船も停泊していて、気分も盛り上がった。バイクで訪れていたので酒が飲めず、本格的なパーティタイムまでいられなかったのが心残り。
実はかつて“ノルウェイの森”を読み始めてすぐ挫折してしまったのだが、“遠い太鼓”はスッと心に入り込んできた。作品の中で彼は自らを“常駐的旅行者”と表現しており、その感覚、とても共感できるし素敵!とすっかりハマったのだった。
●加西 来夏 (かさい らいか)
訪問39ヵ国、好きな言葉は「世界は驚きと奇跡に満ちている」/連日の30度越えで、道民はすっかりバテています。北海道はエアコン普及率全国最下位なのです…。
(日刊サン 2021.07.30)