ラグビーリーグワンの2年目のシーズンが、12月に開幕しました。9月のW杯フランス大会に挑む日本代表のほぼすべての選手が所属する国内最高峰のリーグです。観客席で身を凍えさせる季節に始まり、爽やかな初夏の5月20日の決勝まで、12チームが全16節とその後のプレーオフを戦います。
全12チームのリーグワン
ここでおさらいすると、リーグワンはサッカーのＪリーグと同様、地域密着と収益の事業化を掲げて、今までの社会人スポーツからの脱却を目指して昨年発足しました。前身のトップリーグ時代から一歩進んだラグビー流の“プロ化”を模索中ですが、各母体企業の足並みが揃わず、いまだ発展途上の段階。ディビジョン１の全12チームの親会社は北から順に、パナソニック（埼玉ワイルドナイツ）、ＮＥＣ（グリーンロケッツ東葛）、サントリー（東京サンゴリアス）、東芝（ブレーブルーパス東京）、リコー（ブラックラムズ東京）、クボタ（クボタスピアーズ船橋東京ベイ）、そしてキヤノン（横浜キヤノンイーグルス）、三菱重工（三菱重工相模原ダイナボアーズ）、ヤマハ（静岡ブルーレヴズ）、トヨタ（トヨタヴェルブリッツ）、近鉄（花園近鉄ライナーズ）、神戸製鋼（コベルコ神戸スティラーズ）…と大企業ばかり。
長年日本のラグビー界を支えてきた企業で、ホームタウンでの地域密着は少しずつ浸透するものの、収益面で親会社から離れて一本立ちするのは困難なのが現状です。
プロと社員選手のハイブリット
そして、同じ4年に1度のＷ杯を頂点とし、全員がプロ選手のサッカーと違い、ラグビーはプロ選手と「社員選手」がリーグに混在。表面的には分かりにくのですが、例えば、昨年リーグ2位のサントリーの場合は、大卒で加入した選手は、数年間は社員選手の身分。練習の合間に、スーツに着替えて社業にも励みます。
逆にクラブチーム化が進む三菱重工は、社員選手になれるのは毎年１、2名と狭き門。その他はプロ契約で、社業に時間を取られず、アスリートとしてトレーニングに集中できる一方、引退後の身分の保証はありません。プロと社員選手の“ハイブリット”が日本ラグビーの特長であり魅力なのです。
世田谷ホームで苦戦の黒羊
さて、我が街・世田谷に根差し、魅力を拡大するブラックラムズ東京（リコー）は、12月17日の開幕節でディビジョン2から今季昇格した三菱重工相模原と激突。白星必須の試合でしたが、立ち上がりから相手のディフェンスに圧倒され、４トライを奪われ8－34でまさかの黒星。続く第2節も敗れ、第2節終了時で、12チーム中最下位に沈みました。
地元世田谷から敵地にエール
そして年明けの第3節。この日は愛知での試合のため、区内の二子多摩川の商業施設内で、ファンを集めてクラブ初のパブリックビューイング（PV）を開催。強豪のトヨタ相手に今季初勝利をあげ、故障中でPVにゲスト参加したCTB栗原が感極まってファンの前で涙を見せるなど大いに盛り上がりました。
栗原はリーグワンの魅力について「プロスポーツとしてまだ最初の段階。ラグビーはまだまだ伸びるスポーツなので、ファンの方と一緒に成長していきたい」と熱く呼び掛けました。
伸びしろ残し2年目も進化
昨シーズンはコロナの影響で178試合中28試合が中止となりながら、リーグ全体で延べ48万人を集客。1試合あたり3200人の入場者数と伸びしろを残しました。地元から船出したチームの試合結果が日常の新たな喜怒哀楽となる新鮮さを味わい、取材者の目でラグビーの進化を追いかけます。
東京・大手町発 マスコミ系働き女子のひとりごと Vol.55
（日刊サン 2023.1.13）
竹下聖（たけしたひじり）
東京生まれ。大学卒業後、東京の某新聞社でスポーツ記者、広告営業として15年間勤務後、2012年〜2014年末まで約3年間ハワイに滞在。帰国後は2016年より、大手町のマスコミ系企業に勤務。趣味はヨガと銭湯巡り。夫と中学生の娘、トイプードルと都内在住。
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