先日、東京臨海副都心で開催された「ARTBAY東京アートフェスティバル2023」に、様々な最新テクノロジーを駆使した次世代向きのモビリティ試作品が展示されました。未来のまちづくりを進めるデジタル・イノベーション・シティ協議会が協賛しており、それらの使用体験ができるのが特徴です。なかでも注目を集めたのが、「AIスーツケース」と呼ばれるもので、目的地をスマートフォンで伝えると、その指示通りの場所にナビゲートしてくれるという「ナビゲーション・ロボット」なのです。
これは、自律型ナビゲーションロボットで、市販のスーツケースのような見かけをしています。視覚障害者が迷わず、スマートに街を歩き、目的地に到着できるようにするのが、目的です。
このAIスーツケースは、会場の日本科学未来館を出発して最寄りの駅まで行くという「まちナビ体験」と、会場内を行き来するという「未来館ナビ体験」という2コースで、体験することが出来ます。
画像:「ARTBAY東京アートフェスティバル2023」WEBサイト(※すでに公開終了)
まちナビ体験は、施設と公共交通機関を結ぶまち歩きを想定し、未来館内から最寄りの『ゆりかもめテレコムセンター駅』改札まで体験者を誘導して走行する体験プログラム。未来館から駅改札までの間には横断歩道やエレベーターの乗り降りもあります。視覚障害者を対象とした時間枠が用意されていました。
未来館ナビ体験は、施設内でのサービスを想定し、未来館内で複数の目的地を自由に選択し移動体験を行います。体験者は音声によって目的地を選択し、AIスーツケースが体験者を誘導します。
「AIスーツケース」の仕組み構造としては、スーツケースの中に、PC、モーター、バッテリーが内蔵されていて、レーザー光を使ったセンサーと深度カメラが取り付けられています。
走行エリアのマップ・ルート・周辺施設などの情報を保持しているPCと、周囲の壁や障害物までの距離を正確に測定するレーザー光を使ったセンサーの組み合わせで、利用者を目的地へと誘導してくれる仕組みです。屋外での走行の際には、センサー技術に加え、人工衛星からのGPS電波を用いての位置測定も利用しています。悪天候などによる電波の乱れを基準局の測定データで補正する技術を用いることで、高精度の位置推定が可能にするなど、多くの最新技術の組み合わせで実現したモビリティとなっています。
さらには、スーツケースのハンドルを離したら止まり、車輪からの振動で曲がる方向を判断したり、屋外用は段差を乗り越えるために大きな車輪を使うなど、細部にまでこだわり、使いやすさを追求しています。
No.352
となりのおじさん
在米35年。生活に密着した科学技術の最新応用に興味を持つ。コラムへのコメントは、 [email protected]まで
シェアする