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ちょっと役立つ 日本の新製品

【ちょっと役立つ 日本の新製品】石けん泡消火剤

 温暖化などの異常気象により、世界中で森林火災が発生しています。ここハワイでもマウイ島で、また、カナダのイエローナイフやアメリカ本土でも火災が多発し、多くの被害や犠牲者が出ています。今後も気温の上昇により、森林の乾燥が拡大し、火災の危険性に拍車を掛けているとの警鐘が出ています。一昨年の統計では、世界で失われた森林の3分の1以上が火災によるもので、その広さは930万ヘクタール。日本の国土の4分の1に当たるそうです。

 今回は、日本が開発し、インドネシアやウクライナに提供し始めた、環境にやさしく、かつ、効果が大きい「消火剤」を紹介します。それは、「石けん泡消火剤」と呼ばれ、国際協力事業団の支援のもと、北九州市のチーム(大学や消火剤メーカの合同チーム)が泥炭火災の対策として研究していたものです。

 昔から、水に発泡消化剤を混ぜると少ない水量で火災消火が可能になるということは知られており、水資源に乏しい地域では、よく使われてきたそうなのですが、日本では水が豊かだったので、あまり使われてきませんでした。経験的に、耐火建築物の鎮火には、火災1平方メートルあたり、約300リットルの消化水が必要なのだそうです。しかし、熱したフライパンに、水滴を落とすと弾かれるように、火災の場合でも、放水した水の大半は弾かれてしまい、ほんの5~10%程度しか消火に役立っていないのだそうです。

 しかし、泡消火剤を混ぜると、泡が燃えている部分に付着して空気を遮断するので、必要な水量は10分の1以下で済むのです。

 図のように、水が付着しやすく、泡が酸素を遮断し、輻射熱を冷却し、かつ、燃える材料を隔離する効果をうむのだそうですが、従来の欧米製などの消火剤は、生物毒性があり、環境破壊もあったのでした。

 そこで、北九州市のチームでは「シャボン玉石けん社」とともに、自然素材での泡消火剤を開発しました。自然素材の石鹸は、合成の石鹸や洗剤が人体湿疹などを起こすことから、生物由来の油脂を原料とする「昔ながらの石鹸」をもとに、人以外の自然全体にもやさしい、森林や泥炭地の火災に有効な消火剤を作ったのです。

 まずウクライナに3000リットルの試料を送り、近々、ウクライナでライセンス生産を開始することになっています。ウクライナ国内はもとより、欧州全域の森林火災の消火ビジネスとして、地域を支えることでしょう。インドネシアの泥炭地での火災に対しては、樹木の根を伝って土壌深くに火が入るため、現地での実証実験を繰り返しているそうです。実験では、平均17分の1の水量で消火が出来たそうですが、余裕を持って、「10分の1の水で消火できる」としているそうです。

No.349

となりのおじさん

在米35年。生活に密着した科学技術の最新応用に興味を持つ。コラムへのコメントは、 [email protected]まで

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