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ちょっと役立つ 日本の新製品

【ちょっと役立つ 日本の新製品】水質管理に役立つ、センサーシート

 今回は「水質検査」を取り上げます。最近、「水」が注目されています。オアフ島でも軍の施設から上水道へ「油」が混入したことや、不手際でエワ沿岸に「下水」が流出し海水が汚染されたこと。また、以前からオアフの水道水には、オアフ中央での農地からの地下水が加わり、多くの有機成分が含まれるようになったとか、「水に含まれる成分」が問題になっています。今では、「水道局(BWS)」から定期的に水質のデータが送られてくるようにもなりました。しかし、複数の井戸から大量に取水していますので、厳密な検査と処理は困難な作業になっています。

 水などの液体中の成分を分析する技術には、「遠心分離」や「試薬反応」などが長年、用いられ、これらは液体採取や測定器と試薬投与などの操作が関わり、オンサイトでの検査のボトルネックになっています。身近な経験としては、プールの水が水藻の繁殖でグリーンになるのを防ぐため色々な薬剤を投入しますが、結果として、プールの水のPH(酸性/アルカリ性)を測るのにリトマス試薬紙が用います。その後、偏りを中和剤で調整し、また試薬紙で確認しますが、面倒臭い作業ではあります。

 そこで最近、光学的な検査法が出現し、紫外線計測などが用いられるようになっています。しかし、光源や分析設備が大掛かりになり、携帯性に欠けたり、対象が透明性を持つ場合に限られるという欠点があります。今や最先端の水質検査では、サンプルを持ち帰らなくても良いこと、液体の流路(例えば地下の幹線水道管)を妨げることなく、外部から計測できる技術が求められているのです。

 

 日本の研究チーム(産業技術研究所、東工大、大阪大、中央大など)が、観察対象の流路(例えば水道管)の外壁に、特殊なセンサーシートを貼り付けることで、内部を流れる液体の成分計測と分析を行うことに成功したのです。サンサーシートは「カーボン・ナノチューブ」の薄膜から出来ており、広い帯域の電磁波を検知するための、高分子成分の薄膜基盤と磁気読み出しの電極を備えています。つまり、液体の流れからミリ波、テラヘルツ波、赤外線などの「光」を「電磁波」とともに検出し、それらを電気シグナルに変換します。この「光熱起電力効果」や内部の液体が発する赤外線放射(黒体輻射)も検出できるのです。含まれうる成分のそれぞれに対して、どの程度の含有率であれば、どのくらいの電気シグナルが生起されるのかのデータを積み重ねていきます。そして上水道にどのくらいの「油分」が含まれているのかを、水道管の周りに貼り付けた「光センサーシート」で、サンプル水を採ることなく、その場で水道管内を流れる水内の含有成分と成分量が計測・分析できるというのです。

 このシートは柔軟性が高く、伸縮性・湾曲性がある対象でも密着、安定して検知機能が発揮されます。つまり、検査対象が動いたり、形状を変えたりしても、自ら変形するチューブ状になっています。よって、多様な形状の配管への貼り付けが可能になり、配管の亀裂や、配管内液体の濃度、温度、粘性、流れる位置などを可視化出来るようになったのです。これは、広範な応用が考えられ、将来、植物の生育監視やひいては、人体の血液の状態の測定・分析などにも用いられそうです。

No.318

となりのおじさん

在米35年。生活に密着した科学技術の最新応用に興味を持つ。コラムへのコメントは、 [email protected]まで

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