3Dメガネで豚の体重測定
今回は、まだ試作品なのですが、極めて面白い製品をご紹介します。それは、宮崎大学工学部教授を中心に開発した「豚の体重を測る3Dメガネ」です。
食肉用の豚というのは、出荷時の体重が115キログラムだと最も高い格付けになるのだそうです。従って、多くのブランド豚はこの体重を目指して飼育され、出荷されるのですが、これまでとても困難だったのです。
豚は1日で餌3キロ、水15リットル以上を摂取するので、体重の変動が大きく、また、豚を体重計に載せるにも2、3人がかりの重労働だったため、理想の出荷タイミングを掴むのは、至難の技なのです。
これを3Dカメラを取り付けた「メガネ」を装着することで一人でも簡単に、頻繁に、しかも正確な体重測定ができるようになったのです。
技術的には、人口知能(AI)と拡張現実(AR)の活用で、メガネは、測定用3Dカメラと数値情報を表示する装置で構成されています。3Dカメラで得られた豚の体型データと標準モデルを比較して「枝肉重量」を推定します(枝肉とは頭部や内臓を通り除き、骨がついたままの状態の肉のことで、通常この状態で出荷される)。推定重量はリアルタイムでスマートグラスに表示されます。傾斜センサーにより、メガネを着けた人の頭の傾き具合も検出し、どの方向から見ても数値を得ることができます。
開発グループによると、誤差は数%以内とのこと。現在海外の国際特許も出願中であり、1、2年以内の製品化も予定しているそうです。測定の誤差に関しては続いて改善を行い、より高性能を目指すことになります。
このような装置は、これまで世界でも例がなく、酪農家の負担軽減や安定収入につながることが期待されています。
画像:宮崎大のウエブサイトより
No.291
となりのおじさん
在米35年。生活に密着した科学技術の最新応用に興味を持つ。コラムへのコメントは、 [email protected]まで
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