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【ちょっと役立つ 日本の新製品】レーザー光で害虫を撃ち落とす
今、農作物は無農薬の有機栽培など、“自然”に育てて作物本来の”自然”を味わうという流れと、遺伝子などに手を加えたり栽培法を改善し、品質良く害虫に強く、しかも生産性の高いものを目指す流れがあります。“自然さ”を目指すと、そこには害虫被害をどうするかという大問題に出会います。
世界の農産物生産額約170兆円分のうち、毎年30兆円分の農作物が害虫・害獣被害で失われているのです。害虫が嫌がる成分を分泌するように遺伝子操作を行う方法も有効ですが、害虫側も近年、薬剤抵抗性を持つようになり、農薬が効かなくなっています。虫にとって嫌な成分があってもいずれ耐えるようになり、遺伝子操作作物にも慣れてしまうかもしれません。そこで、これまでの害虫駆除法を置き換える手段として、害虫をレーザー光で駆除する方法が考えられたのです。
レーザー光で害虫駆除する技術としては、アメリカで家畜などに寄生する小さな蚊の駆除技術として実用化が進められています。蚊は小さいので、身体全体にレーザー照射するのが容易で、小さなエネルギーで行えるのですが、農産物の害虫は結構大きいものが多いのです。一晩でキャベツなどを食い荒らすハスモンヨトウ(蛾の一種)などは全体照射すると大きなエネルギーが必要です。
そこで、大阪大などの研究チームは、ハスモンヨトウの各部位に対し、局所的に、青色半導体レーザー光を照射して、各部の損傷の度合いを調べました。結果、胸部と顔部が急所であることが判明し、そこを狙うようなレーザーパルス照射システムを考えたのです。
更に、飛んでいるハスモンヨトウを画像検出して追尾する機能をつけて実験したところ、見事撃ち落とすことに成功したのです。
この蛾だけでなく、アフリカやアジアで猛威を振るっている“サバクトビバッタ”も胸部が急所であることから、これで撃墜可能です。複数の対象を同時に退治することもかなり容易です。また、家庭でのゴキブリ、ハエなども駆除できそうです。
レーザーによる害虫駆除は、世界の食料安全保障に大きく貢献できるかもしれません。因みに、なんだか、最近話題の戦争ドローンや誘導ミサイルの撃墜技術にも似ていますね! 最先端技術の集合です。ただ、必要なエネルギーの量が極端に異なるのと、平和的な目的であることです。
実用化コストや時期は不明ですが、新しい時代を感じさせてくれる技術です。
No.342
となりのおじさん
在米35年。生活に密着した科学技術の最新応用に興味を持つ。コラムへのコメントは、 [email protected]まで
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