ロシアによるウクライナへの侵略戦で、市民が命をかけて国を守る姿には胸が打たれます。火炎瓶で戦車に対抗しようとしています。実は、ガソリンによる人為的な火災は、全火災の2割近くあるのです。一瞬にして燃え広がり、消化器やスプリンクラーなどでは十分に対処できませんでした。
今回紹介するのは「防火する建材」ではなく、「自ら消化する建材」の発明です。「K/SMOKE PANEL」は世界で初めて、無人で初期消火を行う革新的な建材なのです。
「K/SMOKE PANEL」は、火災時に急速な燃焼を断ち切り、素早く消火するカリウムを主成分とした、薄くて軽いシート状の建材で、300℃を超えると自動的に煙状の消火薬剤が放出され、無人でスピーディーに消火します。その特徴から、オフィスビルや病院、駅、学校といった施設や、エレベーター、電車、バスといった狭い空間の壁など様々な場所に設置可能なため、特に公共性の高い場所で、火災から多くの命と財産を守ることが期待できます。また、国内外ともに前例のない、体に無害な消火剤であることも特徴です。
この建材は、主成分がカリウムで出来ており、パネルの温度が300℃を超えると、煙状の消火剤カリウムを放出し、燃焼サイクルを断ち切る仕組みとなっています。煙は人体に無害で、シート状建材を壁などに貼って使用します。
薬剤量4.3kgの建材を設置したコンテナ(幅2m、奥行き2m、高さ1.6m)での消火実験では、1000ml(1リットル)のガソリンが、引火後、約15秒で消火しました。薬剤は20%ほど使用しただけで、大部分は残りました。そして、ガソリンも半分程の500mlが燃えないで残ったそうです。つまり、消火器やスプリンクラーでは初期消火が難しかった「ガソリン火災」をかなり、防ぐことができるのです。
すでに販売されていて、1平方メートルで1万円と、まだやや高額です。火災にあっては困る高価なものや国宝級のものを守るには良いかもしれませんね。
No.310
となりのおじさん
在米35年。生活に密着した科学技術の最新応用に興味を持つ。コラムへのコメントは、 [email protected]まで
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