“シャボン玉”が果樹の受粉を助ける!?
最近、コロナでの外出自粛により、家庭でやさいや果物の栽培にハマった人が増えたそうです。土壌の準備、日当たり具合、水やり、雑草や虫対策など、色々と気を使う作業が続きます。しかし、収穫という目標があるので、楽しい作業です。
ただ、果実の場合には受粉という厄介な手続きがあり、これは多くの場合“自然の行為”に任せることになります。専業ではないので人手での受粉作業はやらず、ミツバチやチョウチョウにやっていただいている人達がほとんでしょう。鳥たちも手伝ってくれているのかもしれませんが、彼らには“成果”をかじられるので感謝はしません。
さて、最近世界的に、ミツバチの個体数が減ってきているとのことで、海外からミツバチを輸入したりして、受粉作業をおこなう果樹園も増えてきていると聞きます。受粉しないと実はなりませんから、極めて深刻な問題です。
今回紹介するのは、花粉が混ぜ込まれた“シャボン玉”を発生する“バブルガン”を搭載した“ドローン”を使って、人工授粉するのに成功した話です。今後の食料生産の維持のために欠かせない技術として注目を集めています。
石川県の北陸先端科学技術大学院大学では、カルシウムなど受粉を助ける成分を加えた“花粉”混じりのシャボン玉液を、バブルガンからナシの果樹園に放出したところ、結実率95%を達成したのです。バブルガンはシャボン玉をバッテリーで自動的に連続して放出でき、一つのバブルあたり花粉の粒子が2000個含まれるようになっていました。
この方法で手間と労力がかかる人手での“受粉作業”と、同程度以上の割合で結実したそうです。ドローンを所定の経路を飛行するようにプログラミングしておき、2メートル位の高さで、毎秒約2メートルの速度でシャボン玉を放出したそうです。
将来は、いろいろな果樹や野菜を対象に、それぞれ最適な成分を含む“シャボン玉”を開発し、自動的に受粉作業を行うことが可能になれば、食料の自給自足や農業従事者の不足などの大問題を改善できるかもしれません。
とりあえず、日本国内の果樹園には大朗報です。バブルガンとドローンによる自動授粉の試みは、世界初だそうです。
No.267
画像:花粉の授粉のためのシャボン玉を、花の雌しべに吹き付けた状態(北陸先端科学技術大学院大学の都研究室のレポートより)
となりのおじさん
在米35年。生活に密着した科学技術の最新応用に興味を持つ。コラムへのコメントは、 [email protected]まで