花を咲かせた“ビクトリーブーケ”
世界パンデミックの不安の中で、日本で開催されてきた東京オリンピック・パラリンピックは9月5日をもって終了し、3年後次期開催国のパリ、フランスへとバトンは渡されました。さまざまな感動と歓喜と涙のストリーが、競技場、選手村から世界へと発信されていきました。
表彰式でメダルと同時に、副賞としての“ビクトリーブーケ”がメダリストたちへ手渡されているのをご覧になりましたか?美しくアレンジされていますね。これらのブーケに使われている多くの花は、東日本大震災で被災した地域で育てられた花で、合計で約5,000個ほど準備したそうです。東日本大震災復興の明るいニュースと、支援者への感謝の気持を表彰台でも見せることができました。そして、東北地方からの新鮮で安全な海産物や農産物も選手村へ運ばれ、選手たちやスタッフたちに喜んでもらえました。
ビクトリーブーケには、オリンピックでは宮城県産のヒマワリが使われましたが、農家の生産者は、通常よりも小さい規格のヒマワリを栽培しなければなりませんでした。通常は直径12〜15センチ程ですが、今回は7センチ程を求められ、このサイズの栽培にたいへんな苦労があったようです。県農業・園芸総合研究所、生産者と協力しあいながら、小さなヒマワリの生産方法として、深く根が張らないように土の深さを10センチ以下にして密植したり、肥料は極力に与えない、出荷時に茎が安定するように水の量も制限するなどの工夫があったようです。
オリンピック期間中は、毎日出荷するため、種植えの時期は5月末~6月中旬に分散したりしたようです。オリンピックが延期されたことで、試験的に生産をすることもでき、その結果は、全体の約7割のヒマワリは注文通りの小サイズに栽培できるようになったそうです。
パラリンピックには、ヒマワリの代わりに宮城産のバラが使われました。ブーケで使用されている他の花には、トルコギキョウ(福島県産)、リンドウ(岩手県産)、ハラン(東京都産)などです。
このブーケは、選手が万が一、ブーケを落としてしまうことも考慮して、花が崩れにくいようにループ状のハランがクッションとなって花を保護するようにしたそうです。保水機能もしっかり備え、真夏でも問題なく鮮度が保たれるようになっています。加えて、選手がプレゼントとして観客席に投げ込むことも想定し、選手だけではなく観客にもケガをすることのないようにブーケ内部まで柔らかい素材で組み立てられていたようです。
日本人の細かな思いやりと知恵と努力が、表彰台に立ったオリンピアンたち、パラリンピアンたちが手にしたブーケに込められていました。