コロナで心配していたのがフラットアイアンビルの近くで大きなスーベニアショップを営むイタリアのおじさん。おじさんといっても、親戚のおじさんではない。だけど、大好きなおじさん74歳。
数年前、観光で来ていた友人がお土産やさんを探していてはじめて行ったのが出会いだった。マンハッタンのあちこちにあるスーベニアショップとは違い、おじさんはすごく親切。一度きりの観光客を相手にするお仕事は、リピート客を気にすることがないからか、気さくに話しをしたりする関係には発展しなかったりするが、ここのイタリアおじさん経営者は違っていた。
終始、笑顔でオープンハート。戻ってくるかどうかわからないお客さんひとりひとりにとても丁寧に心からの接客をしていて、わたしは感動したことを覚えている。そんなおじさんのお店。もしかしたら閉まっているんじゃないだろうか。コロナで一時、観光客がまったくいなくなったマンハッタンでどうやってサバイブしているのか? とても気がかりだった。そして、先日勇気をだしてお店に行ってみた。
すると! 営業していた! 所狭しとニューヨークお土産がならぶ店内を奥へと進んでいくとイタリアおじさんがひょっこりと顔をだしたのだ。うれしきて泣きそうになった。顔を見るやいなや、おじさんも覚えてくれていて、よかった! よかった! おたがい生きていて本当に良かったと、しばらく喜びのエネルギー全開に包まれた。イタリアおじさんは、何があっても陽気なエネルギーでひとを元気にしてくれる。
しばらくすると、30代くらいの女性のお客さんがやってきた。ニューヨーク仕様のクリスマスツリーのオーナメントをおじさんに差し出すとこう切り出した。
「ずっと気になってたの、このお店のこと。本当によかった!お店が無事で、おじさんが無事で本当によかった。わたしは道を挟んだ向かいにあるビルで働いてるの。そして明日、ニューヨークを離れ、コロラドに帰るの。帰る前におじさんのお店で心に残る何かを記念に買いにきたのよ」
そういって、女性はほほえんだ。
ああ、おじさんがいつもみんなに分け隔てなく親切だからみんなも、その愛をもらっておじさんのこと心配してるひとがたくさんいるんだ。おじさんの生き様がかっこいいと思った。
わたしも記念に、自由の女神のミニチュア像を購入した。するとおじさん、奥からキーホルダーやらユニコーンやら両手いっぱいになるほどのスーベニアを、「ありがとう」といって渡してきてくれた。ありがとうは私の方だよ、おじさん!
混沌としたニューヨークでの生活の中で、おじさんのようなあったかい心のひとと出会えたことが私は何より宝なんだよ。
おじさんは、これから戻ってくる観光客を期待してさらに売り場を広げてがんばろうとしている。
お店の名前は“Memories”。ニューヨークのお土産だけでなく、わたしにとっては、生涯忘れられない心のメモリーが生まれる大切な場所だ。
私の旅ストーリー
大森 千寿
NY在住。香川県高松市生まれ。アーティスト・作家・アートセラピスト・米国NLP協会認定マスタープラクティショナー・現代レイキマスター。NY・ハワイ・日本の3箇所にアートスタジオを構え活動。著書に、amazon電子書籍「ハワイに不動産を購入して人生10倍楽しむ方法」「ハワイで聞いた! 32通りの生き方(第一弾)」「人生の冒険」がある。NYで新しい扉を開く2日間プログラムやニューヨーカーと行く穴場ツアー、アート最前線ガイドなど開催中。 www.chizuomori.com ameblo.jp/adamwestonart
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