ここ数日、一気に20度まで気温が上がる日が増えてきた。マンハッタンの街には春が待ちきれない人たちがノースリーブやTシャツ、短パンといった薄着で太陽の光を直に浴び、春の陽気を愉しんでいる。街のあちらこちらで色とりどりのお花たちが今日の命を咲かせている。

　ちょうど去年の今頃はニューヨークは完全にロックダウンだった。ステイホームで過ごし、外出するのは食料の調達だけ。窓からみえる外の景色だけが唯一、リアルであり現実の世界がまだ、存在しているという事をおしえてくれる手がかりだった。桜が咲く時期になっても、外出はできないまま。

　そんな状況下において、今まで観てきた過去の桜を想像し、心の中でそっとその残存を大切に温めるしかなかった。

　あれから1年。先週末には1回目のワクチン接種も完了。1年前には、じぶんがワクチンを接種していることなど想像できていなかった。ニューヨークでは急ピッチでワクチン接種が広がり、今週からは16歳以上の人を対象に接種が可能となった。

　ワクチンを打ったからといってコロナにかからないわけではない。しかし、裏では最前線で尽力をつくしてくださっている関係者の方々の存在がある。そのおかげで、私たちは命をつなげるチャンスをいただいている。世界は止まってはいない。しっかりと進んでいる。そんな現実を感じることができて嬉しい。

　セントラルパークではいま、桜が見事に満開の時期を迎えている。創作の息抜きに夫アダムと自転車に飛び乗り桜に会いにいってきた。まさに圧巻。去年は想像のなかだけで感じていた桜だが今年は実際にこの目で見ることのできる喜び。

　ああ、リアルに味わえるということがこんなにもしあわせなことだったなんてと深く気づかせてくれる。

　数億年前にできたとされる岩石、マンハッタンシストのうえに寝転んで空を眺めてみた。岩石ができた数億年前と変わらぬ青い空。その片隅で、どこからともなく風がす〜っとやさしく頬をふれるたび、淡いピンクの小さな桜たちが一斉にやさしくゆれる。

　その景色は、ダイナミックでもあり深い深い愛に身を包まれているかのようでもある。今を生かされていることへの感謝の気持ちが止めどなく湧いてきた。

　いまを生かされていることがどれだけ奇跡なことなのか。

　今日もありがとありがとう。