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3の法則

3の法則

(前回まで) 「世界をまたにかけて働く」ことを幼少からの夢としていた私は、意と反して損害保険会社に入社。順風満帆な生活を送っていたが、会社が急きょ経営破たん。その後の人生を切り開くために渡米しMBAを取得。その後メガバンク勤務を経て、新たなライフワークに取り組むため、渋谷にあるベンチャー企業の門を叩いた。 

 

 2006年2月中旬の朝。私は渋谷駅南口から今月から働き始めた会社に向かっていた。思えばこの2週間で私を取り巻く環境は180度変わった。通勤の光景ですらメガバンクで働いていた時とは異次元である。朝の大手町駅は黒一色。多くの人がしんどそうだったり、しかめっ面だったり。いずれにしても多くの人がつまらなそうな顔をしてそれぞれの会社に向かっている。一方のここ渋谷は、スーツもいるがデニムなど自由な格好をしている人が目立つ。悲壮感はない。当時の渋谷はベンチャー企業の聖地であり、夢や野望など、パワーみなぎる地であった。 

 朝礼を終えると、ビルの屋上にある喫煙所に行くことがルーティンになっていた。しばらくすると、数名の若手社員が息を切らせながらやってきて、「昨日はご馳走様でした」とお礼を口にした。昨晩はこの者達と街に繰り出し、終電近くまでどんちゃん騒ぎをしていたのであった。転職前にある知人からこんな話を聞いた。“ベンチャー企業には3の法則というのがあって、3週間または3か月で芽が出ない人は、その会社では成功しない。最後のチャンスが3年かな”。これを意識した訳ではないが、この会社の仕事のやり方は今までと180度変わって非常に粗削りであり、特定の人のみに張り付いている仕事の多さが目に付いた。だから最低限でも人間関係をより早く構築する必要性を感じ、手っ取り早い手法が杯を交わす、ということだった(実際に入社してから2か月間は、夕飯は家では一切取らなかった)。

  会社の中ではいつも何かが起きていた。でも、常に和気あいあいとした雰囲気であった。こんな情景がある。ある日、経営企画室の同僚の女性が、カリカリしながら席に戻ってきた。開口一番、「なんか騒がしいと思ったら、新しいメールドメインのことで、副社長と営業担当の専務が大声でやりあってて。さらに、そこにもう一人の役員が加わって、三つ巴で言い合いしてるのよ、この忙しい時に」。それを聞いてほかの同僚も「馬鹿じゃないの?」と言い返す。そこに上司である常務がきて「俺も参戦しようかな」というと、「そんな暇あったら〇×▲してください」とあちこちから突っ込みが入る始末。 

 でも、そんな企業風土が私の肌にはとても合ったようだ。私はあっという間にこの会社に馴染み、知らないうちに有名人の一人になっていた。 

 上記エピソードには落ちがある。常務の発言に対して私が「じゃ、私が行ってきますよ」と返し、それに対して常務が「お前、本当に3年くらい前からうちにいるようだな」と返してきた。入社からちょうど3週間くらい経った頃のことであった。

(次回につづく)

No. 177   第3章 「再挑戦」

Masafumi Kokubo

1995年中央大学法学部卒。損害保険会社勤務後、アイオワ州の大学院にてMBAを取得。その後、メガバンク、IT企業を経て、現在はグローバル企業にて世界を相手に奮戦中。趣味はサーフィンとラクロス。米国生活は通算7年。

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