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デジタル版・新聞

My Destination

【My Destination】引退(Part2) ラクロスが与えてくれたもの

(前回まで)2008年は、勤務先の副社長として駆け抜けた一方、私生活においても人生の大きなの節目となった年であった。即ち、それまで生活の大部分を占めてきたラクロスから身を引くこととなったからだ。話を前回寄稿分からの続きに戻す。

 

 2008年10月末の公式戦に敗れた瞬間、私の中で引退の二文字が可能性から決意というものに変わった。身体が限界に来たわけではなかった。どちらかというと、ラクロスへの熱が完全に冷めてしまった。その試合から数日後に幹部宛に自分がキャプテンから降り、ラクロスも引退する旨のメールを送った。それに対する幹部たちの反応は私が予期していた以上に辛辣なものであった。私の気持ちを察するものは一人もおらず、それどころかそれまでのキャプテンとしての私の行動が精彩を欠いていたと非難された。即ちラクロス熱が冷め始めていたのが、前々から周りには伝わっていたということだ。

 その時はこの幹部たちからの反応は相当堪えたが、その後の自分の人生訓として大いに生きることとなった。ラクロスでは一人の人間として多くのことを学ぶことができた。特に、社会人チームにてキャプテンや副キャプテンとして経験したこと(そこには成功も失敗も数多くある)が、ビジネスにおけるリーダーとしての私のスキル形成に大いに役立った。

 ビジネスも組織として動く以上、チームワークが良いに越したことはない。そのチームワークの良し悪しを左右する大きな要素がリーダーの在り方だ。リーダーは目標に向かってコミットし、妥協したり、ゲームセット前に負けを受容してはいけない。チームの士気に関わる。もしそのような泣き言をいうなら即そのポジションから降りるべきだ。リーダーは時に孤独であり、一人で大きなプレッシャーに立ち向かわないといけない時もある。それを支えてくれるのが腹心の存在。万一腹心たちがそっぽを向いてしまえば、チームワークは更に悪化する。だから、まずは幹部が一つになることが大事だ。それはごく当たり前のことと思うが、私はこれを身をもって体験することが出来た。だからただの理屈ではなく、自分の血となり肉となった。

 かけがえない人的ネットワークも、ラクロスが私に与えてくれたものである。ラクロス引退から数えて4年半後、ビジネスのキャリアアップを考えていた私は転職までの期間を利用し、サーフボード一本抱えハワイに来ていた。その時、ハワイに在住していたかつてのラクロス仲間と再開する機会があり、近況報告をするにつれ、本誌コラムへの寄稿を勧められた。「できれば200回を目標に連載してください。」その時彼が言った言葉が今でも昨日のように思い返される。そして今回がその栄えある200回目の寄稿であるのが、偶然の賜物としか言いようがない。

(次回につづく)

No. 200   第3章 「再挑戦」

Masa Kokubo

1995年中央大学法学部卒。損害保険会社勤務後、アイオワ州の大学院にてMBAを取得。その後、メガバンク、IT企業を経て、現在はグローバル企業にて世界を相手に奮戦中。趣味はサーフィンとラクロス。米国生活は通算7年。

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