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My Destination

【My Destination】第3章 「再挑戦」IPO(株式上場)準備再び Part2

(前回まで)「世界をまたにかけて働く」ことを幼少からの夢としていた私は、意と反して損害保険会社に入社。順風満帆な生活を送っていたが、急きょ会社が経営破たん。その後の人生を切り開くために渡米しMBAを取得。その後メガバンク勤務を経て、新たなキャリア形成のため、渋谷にあるベンチャー企業の門を叩く。その中で一旦子会社の副社長を経験、200941日付でベンチャー企業に復籍した。

 

 前回寄稿した通り私が復職した親会社では、みずほインベスターズ証券を幹事証券会社として着々とIPO準備が進められ、そこに以前のIPO準備チームの主要メンバーだった私が今度はリーダーとして再加入したことで、IPO準備は加速していった。そして、復職から1年が経過しようとしていた時には、証券会社における最終関門である審査部審査に突入していた。

 3月決算のわが社は20104月に事業年度が改まり2010年度を迎えていた。2010年度の事業計画は意欲的な成長を目論む力強いものとなっていた。実際に上場する際は、この事業計画が投資家に評価され上場時の株式の売出価格が決定することになる。理論的には、強い成長性を示せる銘柄は高値が付く傾向にあり、それを分かっている当社や証券会社はIPOに対して大きな期待を寄せるようになっていた。

 そしてついに、紆余曲折あったものの、ゴールデンウィークを迎えるころにはIPOの先行きにつき、明るい兆しが見えてきた。即ち、証券会社の審査通過の目途が立ってきたのである。審査が終了すれば、東京証券取引所に対して正式に株式上場申請を行う段取りだ。ここまでくるとさすがに社内もIPOの話で持ちきりになり、全社一丸となってIPOさせるんだ、というようなムードが高揚してきた。

 そのような中、この勢いに水を差すような事件が起きた。始まりは一通の週刊誌の記事であった。その内容は、「最近上場した会社に不正会計の噂がある」とのことだった。その記事で私が気になったのは、その会社が上場した際の幹事証券会社が我々同様にみずほインベスターズ証券であったことであった。その際は同証券会社の当社担当者も、記事自体がデマと心から信じていて、「こんな記事に社名出されたら、うちだって大迷惑ですよ」と笑い飛ばしていたくらいであった。

 ところが、山一証券の時のようにこの手の話にしばしみられることなのだが、スキャンダルはエスカレートしていく傾向にある。これも例に漏れず、次に刊行された記事では、不正会計は上場前から行われていた、というところまで踏み込まれた内容が記載されていた。これは、この不祥事は幹事証券会社の審査が適正に行われていたか?という疑問を示唆するものであって、矛先は不正会計を行った会社だけでなく、それを見抜けなかった証券会社にも向けられたのである。

 最初の記事から数週間後、今度は、みずほインベスターズ証券が主幹事を務めた他の上場案件でも不正会計が発覚したとの報道がなされた。

 金融庁がみずほインベスターズ証券に入検するのは、それから数日後のことであった。

(次回につづく)

No. 213   第3章 「再挑戦」

Masa Kokubo

1995年中央大学法学部卒。損害保険会社勤務後、アイオワ州の大学院にてMBAを取得。その後、メガバンク、IT企業を経て、現在はグローバル企業にて世界を相手に奮戦中。趣味はサーフィンとラクロス。米国生活は通算7年。

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