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【My Destination】第3章 「再挑戦」最後のご奉公 Part 1
(前回まで)「世界をまたにかけて働く」ことを幼少からの夢としていた私は、意と反して損害保険会社に入社。順風満帆な生活も束の間、会社が経営破たん。その後の人生を切り開くため渡米しMBAを取得。メガバンク勤務を経て、新たなキャリア形成のため、渋谷にあるベンチャー企業の門を叩く。それから6年が経過し、経営企画室長として会社運営に無くてはならない存在になっていた。
2012年12月中旬。社長室に呼ばれた私は、その壮大な計画を聞かされ身震いを隠せなかった。もしこれが成功すれば、会社の規模は一気に倍以上となり、取り扱うサービスの幅も拡大する。反面大きなリスクも伴うので、会社にとっては創業以来の大勝負となる。この一大プロジェクトの実行責任者として、まさに私が任命された瞬間であったのだが、私はこの話を聞きながら、“これがこの会社への最後のご奉公となるだとう”と考えていた。
数週間前より、私にとっての一世一代の大勝負となる転職活動を開始していた。志望業界を180度転換するため、経験値の無さから苦戦が続き、全く見通しのつかない活動となっていた。でもこれは自分の夢に挑戦する最後のチャンスであって、何があってもチャレンジすると決めた。それは、このベンチャー企業に留まるという選択肢がないことも同時に意味する。この会社に対しては、何事にも代えがたき大恩がある。だからこそ、この最後のご奉公は、私にとってこのベンチャー企業に対する仁義切りであって、確実に成功させる、という強い覚悟をもって臨むことになった。
壮大な計画は、複数の戦略的ディールから成り立っていた。まず一つは、大株主の異動。第二の大株主である総合社社が当社株式を手放す意向で、その受け皿としてNECグループの会社が名乗りを挙げた。このケースでは、NECグループは当社に出資することになるため、そのための査定が入る。査定は決算状況や事業計画の確認などのほか、経営陣のインタビューなども発生する。それらを事務方として対応するのが私となる。
さらに、このNECグループの子会社にコールセンターを営む会社があり、今度は逆に我々がその会社に対して出資することとなった。つまり、コールセンター運営に長けている我が社が「餅は餅屋」として同社も運営する、というシナリオだ。このケースでは、逆に我々がこの会社の査定を行う。その査定の責任者も私である。
これで終わりではない。会社から徒歩数分の渋谷クロスタワーに本社を構える人材会社に対して出資を行う。同社株式の過半数を取得することで実質的な支配権を掌握するのが目的だ。さらに、五反田に本社を構えるIT系の会社に対して出資を行う。この会社は米国Apple社の正規サービスプロバイダーであり、今後のスマートフォンの普及を視野に入れた布石となる。これらのM&Aも私が責任者として指揮を執る。こんなに多くの案件が重なったのは本当に偶然の産物なのだが、最後を飾るには十分すぎるほど役者が揃った、と思わざるを得なかった。
社長室から出た私は、すぐに電話を手にした。そして数時間後には、私の片腕である太田会計士と作戦会議を開始していた。
(次回につづく)
No. 232 第3章 「再挑戦」
Masa Kokubo
1995年中央大学法学部卒。損害保険会社勤務後、アイオワ州の大学院にてMBAを取得。その後、メガバンク、IT企業を経て、現在はグローバル企業にて世界を相手に奮戦中。趣味はサーフィンとラクロス。米国生活は通算7年。
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