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デジタル版・新聞

My Destination

【My Destination】第3章 「再挑戦」2012年秋

(前回まで)「世界をまたにかけて働く」ことを幼少からの夢としていた私は、意と反して損害保険会社に入社。順風満帆な生活も束の間、会社が経営破たん。その後の人生を切り開くため渡米しMBAを取得。メガバンク勤務を経て、新たなキャリア形成のため、渋谷にあるベンチャー企業の門を叩く。それから6年が経過し、経営企画室長として会社運営に無くてはならない存在になっていた。

 20129月のある日。社長室に呼ばれた私は、第二の大株主である総合商社に当社株式を手放す意向があると社長から聞かされた。予期していたこととはいえ、あまりの展開の速さに多少なりとも動揺を隠せなかった。

 数年前にこの商社が当社に資本参加した際は、当社とのビジネス創出に前のめりだった。ところが1年ほど前に当社担当部門の役員が変更したことで潮目が変わった。新役員は当社とのビジネス創出には関心がなく、来る当社のIPO(株式上場)にて、当社株式を売却しようとしていた。ところがその目論見は、昨年末に当社が上場を断念したことで期待外れとなり、少しでも良い条件で引き受けてくれる先に当社株式を売却するという方針に切り替えたそうだ。

 しばらくして両社のトップ会談が持たれた。そこでは、まずは我々が株主候補を探し提案することが受け入れられた。しかし、数か月内に見つけられない場合は、彼らが独自で売り先を探し売却する、との条件が付いた。最悪のシナリオは、時間切れとなって我々の望まない者に株式が譲渡、その望まない新株主の支配を我々が受けることである。この瞬間から、新たな株主探しが経営の最重要課題となった。

 世の中には色々と売るものはあれど、「自分の会社」というものを売るのは非常に難易度が高い。このセールス活動は当然ながら難航し、時間ばかりが過ぎていった。約束の期日までひと月切ったある日、大きなニュースが飛び込んだ。“NECの関連会社が、当社の株式取得に関心があるらしいとのことだった。そして、この情報は実現に向けて動いていくことになるのだが、その話は後日に。

 一方で、これらと並行し私の心境にも大きな変化が訪れていた。昨年末の上場断念以来、会社の成長シナリオを何度も何度も考え直してきた。だが、結論はいつも似通ったものとなった。それは、現在進めているM&Aなどで業容拡大したとしても、日本の経済自体が成長しなければ我々の成長も限定的である。だったらいっそのこと活路を海外に、と考えても、我々が人手を使って提供する価値は言葉の壁を越えられないから、その線も無い。というものである。

 この思考を繰り返すうちに、当社というよりも国内のみを対象としたビジネス(即ち、私は今までずっとそれのみに従事してきたのだが)のリスクを感じるようになってきた。そう考えを巡らせた時、私の深層心理に訴えかけるものがあった。世界をまたにかけて働く、ことがお前の幼少からの夢ではなかったのか?と。

 私はあと数か月で40歳になろうとしている。もし世界をまたにかけて働くことに挑戦するなら、これが人生最後のチャンスかもしれない。人生をかけた転職活動を開始したのは、それから間もなくのことだった。

(次回につづく)

No. 230   第3章 「再挑戦」

Masa Kokubo

1995年中央大学法学部卒。損害保険会社勤務後、アイオワ州の大学院にてMBAを取得。その後、メガバンク、IT企業を経て、現在はグローバル企業にて世界を相手に奮戦中。趣味はサーフィンとラクロス。米国生活は通算7年。

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