新型コロナウィルス感染症について
「草の戸や 日暮れてくれし 菊の酒」。俳句の巨星松尾芭蕉の句です。9月9日は重陽の節句で、不老長寿を願う行事として古くは最も盛んに執り行われていました。その折、菊の花を盃に浮かべて香りを楽しんだり、前日に菊の花に綿を被せて、翌朝、菊の露を含んだ綿で身体を清めたりと風雅な一日を過ごしたと言われています。
今、日本では新型コロナ感染者の爆発的な増加が続いています。特に若い世代の感染者が多いのが特徴でデルタ株の感染力の強さは想定以上で、東京では医療崩壊が現実味を帯びてきました。これまで、HPやLineで新型コロナ関連論文を中心に読者にお伝えしてまいりました内容のうち、私たちができる予防とすでにワクチン接種済みの方が再感染するブレークスルー感染に関してお伝えしたいと思います。
ワクチン接種が進む中「米東部クラスター、ワクチン接種者が74%、当局分析“重症化を防ぐ接種”は推奨」の見出しが日経新聞に掲載された時には驚きと不安に駆られた方も多かったと思います。さらにCDCの分析によれば、デルタ株に感染したグループでは未接種者グループと同程度のウィルス量であったそうで、このニュースを目にして落胆した方もおられたと思います。但し、このクラスターでの死亡例・重症化例はこれまでのところ、報告されていません。ブレークスルー感染が起こるのであれば、ワクチン接種に疑問を持たれる向きもあるかもしれませんが、ワクチン接種者が多くなれば必然的に変異株へのブレークスルー感染の頻度も高くなり、イスラエルの研究では接種完了後2週間以降に起こるブレークスルー感染の割合は2.6%だそうです。但し、感染してもワクチン接種者では重篤化への予防効果は相当高いので、数だけ見ていたずらに不安を煽るのは控えたいものです。
では私たちにできる感染予防について駆け足でお話しましょう。すでに実行なさっている方も多いと思いますが、①マスク②うがい・手洗い③密を避ける④ビタミンDの血中濃度が低い場合、感染後に重篤化する割合が多いので、日光に当たる(あるいはサプリメントで補充)⑤結膜炎などもリスク因子ですので、外出後目を洗う⑥外出後の衣服などの消毒⑥トイレなどのこまめな消毒⑦鼻の上部からのウィルス侵入を避けるために鼻の中を洗う⑧狭い通路などでは意識的に人との距離を取る⑨感染した場合にはパルスオキシメーターによる血中酸素濃度を測る必要があるため、パルスオキシメーターを購入しておく⑩適切な栄養摂取と適切な睡眠、などが今、お薦めできそうです。
また、スウェーデンの研究でCovid-19は心筋梗塞や脳梗塞のリスク因子となりますので、基礎疾患がおありの方で感染なさった場合には直ぐに必ず担当のドクターにその旨お伝えください。
神楽坂発 お身体へのお便り No.97
安田祥子 Akiko Yasuda
株式会社jast代表取締役会長
統括メディカルアドバイザー、フリーライセンスドクター、「農林水産省 産学共同プロジェクト」メンバー
最愛の娘の突然の死をきっかけに、健康は当たり前のものではなく、自らの手で守り育むものと痛感し、分子生物学や医学などを学ぶ。2013年(株) jastを設立し家庭と医療機関を結ぶ架け橋としてのアドバイザー育成に取り組む。これまで200件以上のクライアント様の健康・医療・日常生活のご相談に応えるとともに、教育部門JAMAで主席講師を務め分子生物学の観点から細胞に働きかける栄養素や最新の遺伝子研究など多岐に渡る講義を行う。数多くの機関誌への執、講演会、セミナーなども行っている。
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