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デジタル版・新聞

コラム 来夏の映画観ようよ

TENET

「“TENET”ヤバい」。鑑賞後すぐ、思わず友人に送った感想はこのたった一言のみ。どこがどう、と具体的に伝えることすら出来ないほどの衝撃だったのだ。

 

 ウクライナの首都、キエフ。満席のオペラ劇場に突然武装集団が現れ、建物と観客を占拠しテロを起こす。それを制圧しようと特殊部隊とCIAのチームが突入、その中の“名もなき男”はある目的を遂行しようとするも敵に捕えられてしまう。彼は秘密を守るために劇薬を飲み、自ら口封じを試みる。

 しかし次の瞬間、医療用ベッドで目が覚め、フェイという男から「第三次世界大戦を阻止せよ」という重大な任務を命じられる。さらに“TENET”という言葉を忘れるなと念を押され、新たな仲間であるニールと共にミッションをこなしながら、次々と不可解な現象に遭遇することにー。

 

 冒頭、いきなりクライマックスかというほど大迫力の銃撃戦が始まる。最初からこんなに飛ばして大丈夫か…という心配は杞憂に終わり、息もつけない緊張感で映像とストーリーが進行していく。難解な物理学用語、エントロピーやアルゴリズムなどおよそ素人には馴染みのないセリフが飛び出し、頭の中の情報処理が追いつかなくなるが、何となく理解したつもりでいて良いと思う。大事なのは壮大な世界観と、ただのタイムトラベルとはまた別物の“時間の逆行”を直感で楽しみ、体験すること。

 監督を務めたクリストファー・ノーランといえば、“インセプション”や“インターステラー”でも複雑な時間、空間の概念を表現してきた。その集大成が本作で、ラストまで「あのシーンはどうやって撮影されたのだろう」、「こんなアイデアは誰も思い浮かばない!」と驚愕の連続だった。全容を把握するためには二度、三度の鑑賞は必須で、見る度に新たな発見がありそうだ。

 

 帰り道、映画を思い返しながら、どこかで時間の逆行が起こらないかと周囲を見渡していた。それから数日、件の友人からメッセージが届いた。「“TENET”ヤバいね」。

加西 来夏 (かさい らいか)

映画は年間100本以上視聴、訪問39ヵ国〜の旅する映画ラヴァー/インド、イギリス、エストニア、デンマークと様々な国で撮影された中でも、特にイタリアのアマルフィ海岸のシーンが美しく、また訪れたいなぁと思いました。

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