早くも「おせち商戦」の 火ぶたが切られた!
9月下旬に入ったころ、東京の多くの有名百貨店では、既に今年暮れの『おせち料理』の販売合戦に突入していた。長かった「不要不急の外出」や「巣ごもり」のコロナ禍対策の鬱憤を一挙に吹き飛ばすかのように、東京の有名百貨店では既に激烈な販売合戦が展開されている。今年のおせち料理の特色は、高価な外国食材を贅沢に使った超豪華なおせち料理が注目の的となっている。値段が往年よりも高く設定されているのも特色であると言えよう。
例えば、高島屋百貨店は、『高級お取り寄せグルメ』と言う名目で、有名な高級日本料理店と協力し、32万4千円の四段重のおせち料理を販売するという。そしてもう一種類は、外国の最高級食材を一堂に集めた料理で構成されている。フランス、スペインやドイツなどの異なった国々の食材を一堂に詰めて、同時に楽しめるおせち料理である。
一方、東京銀座の松屋は、税込み40万円のイタリア風のおせち料理を販売することに決めたとのこと。手掛ける相手は同じく銀座の有名店である『ブルガリ』レストランである。使う食材は、オマールエビや黒トリュフ、カモの燻製ハム、ローストビーフなど、それに50年熟成のバルサミコ酢も添える等々。
同店関係者によると、昨年のおせち商戦の売り上げは、前年より40%も増え、品切れになった商品も続出したほどであったという。そこで今年の販売合戦では12万9600円のおせち料理を重点とし、売り上げは前年比5%増、約1億円の売り上げを目指すというのである。
『そごう・西武』デパートは、料亭・名店のおせちの商品数を去年の1.2倍に増強し、通販サイトでは去年より約2週間前倒しの9月22日から販売を開始したという。昨年は早い時期に買う客が多く、年末近くには品切れの商品も出たという。
今年は9月下旬から通販サイトで予約受付をはじめた店が多い。その理由は昨年の経験からであるようだ。
昨年のこの時期はコロナ禍の蔓延が酷かったため、帰省を見送った人が多く、代わりに実家におせち料理を送るケースが多かった。大丸松坂屋百貨店によると、同店の去年広域配送のおせち料理の売り上げは前年の6割増だったため、今年は販売開始を早めるとともに、対象商品を2割増やすことにしたという。
高級品ばかりが売れるというわけでもない。中間層以下や、「お一人様」の生活を楽しむ人々もいる。これら所得の低い、または「個食」を求める人々の「おせち料理」も必要となる。それが食材の質と量を簡素化したおせち料理である。高島屋の去年の販売実績を見ると、この種の41種類のおせちは大好評を得て完売、今年は52種類に増やすことにしたという。この種のおせちは1万から2万円程度で買えるので、どの家庭にも大した負担にならず、販売店は商売繁盛となっている。
このようにみてくると日本のおせち商戦は、高級品とお手頃品の2極化傾向が今後も強くなることが予想されよう。
今どき ニッポン・ウォッチング Vol.215
早氏 芳琴