このような空き家を実際に手に入れ、大改造を行い、現在はカフェを経営している家主がいる。彼は満面笑顔で、淡々と次のように述べる。「確かにこの木造２階建てのカフェの一軒家は、いま日本流行のマッチングサイトの『空き家ゲートウェイ』を通して100円で、家屋と土地を手に入れ、ここでカフェを開くことができた」と。

　この家屋の正確な所在地は、長野県中野市の市街地から、車でブドウ畑がある高社山の麓を走り抜けて約１５分、登山口の近くで車を降り、未舗装の小道を少し入った先に、この木造２階建ての一軒家がある。

　この「空き家ゲートウェイ」を通して、100円で家と土地を手に入れた彼は、「元々は川口市の会社員です。いまは、毎週の週末や休みの日に、このカフェを開くことにしている」と。

　上述の同サイトは、老朽化がひどかったり、不便な土地にあったりして売れない空き家を、100円～100万円の値を付け、「100均」と銘打って掲載し、活用案を募りながら、欲しい人に販売している。この家も買った当時は、すぐに人の「住める状態ではなかった」ので、約1500万円をかけてリフォームし、カフェ兼住居として整備した。床は張り替えたが、柱や梁、それにガラス戸等は元からあったものを活かした。現在は登山客や近所の人がふらっと立ち寄ってくれる場所となっている。

　同サイトは2019年の開設以来、約130の物件を紹介したが、成約できたのは42件のみにとどまっている。

　一方、東京都の人口は、長年人口の「一極集中の緩和」や「地方への移住」に力を入れてきたが、なかなか思うような成果を収めることが出来なく、関係機関が頭を悩ましているようである。

　先進国の首都には常に人口が集中し、政府機関、教育、医療や交通などの諸施設が整っているため、人口の集中が自然と起こりやすくなり、特に日本のような小さな島国で、人口密度の高い国土では、東京都の新築マンションが１室１億円の高値になるのはやむ得ないことになるでしょう。

　全国空き家アドバイザー協議会の関係者が言うには「空き家を手放す側も受け取る側も、土地を所有することには責任が伴い、有効に活用して地域の価値を上げていく必要があることを理解すべきであることが最も大切である」という。