洋上風力発電、 日本の「宝」と成り得るか
日本には「宝のもち腐れ」という諺(ことわざ)がある。ところで、一部の日本人には、日本が天然資源の貧弱な島国であることに、残念な気持ちを禁じ得ないという。これは、日本の実態を如何に理解すべきか、さらには将来はどうあるべきか、という非常に興味ある問題でもあろう。
今日の日本は世界経済大国の一員であることは、誰もが認める事実である。四方八方を海に囲まれている島国には、それなりの恵まれた「独特の資源」を享受しているのである。その「独特の資源」の最たるものは、他でもなく「洋上無尽の風力」だろう。この無尽にある風力を「資源」に変換し、有効に活用できれば、最善の策にもなり得るだろう。
周知のように、アラブ諸国や米国には、広大な地下資源の豊富な領土がある。その地下に埋蔵されている原油の鉱脈を探し求め掘り当てれば、石油は昼夜を問わず湧き出す。他方で、日本は幸い領海と排他的経済水域が世界で6番目に広く、風の「資源」にも恵まれている。四方八方の海洋から吹きつけてくる洋上の風力も、同じく昼夜を問わず我が国土に吹きつけてくる。この世に平等・公平な「神」が実存すると言うのであれば、我々も見捨てられていないことになるだろう。違いがあるのは「原油」と「風力」という資源においてだけである。この違いを人間の知恵で同じ『エネルギー』に変えることができれば、希望が見えてくる。
この無尽蔵の風力を「エネルギー」に変換する試みは、原油があり続けている時勢においても、考えられている挑戦でもある。広範な近海の洋上の風の通賂に、大きな風力発電風車を設置し、風力を電力に変換しそのエネルギーの獲得に成功したのは、ヨーロッパでは英国が先輩格であろう。我が国もすぐにその後を追ったが、洋上の風力発電風車を外国から輸入し、陸地の風に並べただけでは、近隣住民の猛烈な反対に遭い、止む得なく後退せざるを得なくなったのである。
しかし、2011年の東日本大震災による東京電力の原子力発電所に起こった大災難は、今日に至ってもまだ完全に収束できず、これからまだ数十年の歳月がかかることが現実になった。この悲惨な教訓が再び、我が国を洋上風力発電への挑戦に駆り立てることになった。原子力発電の後継事業としての役割を含むこの新事業に、関係当局もかなり期待している。先月には既に「洋上風力産業ビジョン(仮称)」を年内に策定すると、当局は表明した。
関係当局は早くもこの洋上風力事業を進める区域4カ所を提案している。洋上風力の活用拡大は、脱炭素の気候変動対策や将来的に原発の比率の削減にも役立つ。
一洋上風力の設備や事業規模は数千億円に達することもある。運営に当たる専門技術者や補修人員等の雇用が創出され、地域活性化にも繋がる。この新事業が順調に進み、1千万キロワットの発電力に達すれば、約13兆から15兆円の経済波及効果があるとの試算もある。
日本の洋上風力発電が日本エネルギー供給にとって、真の「宝」に成長できることを祈るばかりである。
今どき ニッポン・ウォッチング Vol.189
早氏 芳琴