忘れてはいけない! 富士山噴火の可能性
何かにつけて「コロナ禍」に気を取られている今日この頃だが、我々が居住しているこの日本列島には、実はもう一つの懸念される大きな問題を抱えている。それは、富士山の噴火に関する心配事である。およそ関東地方に居住している人々は、最近同地区で起こる大小異なる地震の回数が、少し頻繁になってきているように感じるからでもある。
一方、国の中央防災会議の作業部会でも富士山の大規模噴火が起きた際に、火山灰が首都圏に与える影響を試算した報告書が公表され、注目を集めている。
同報告書によると、最悪の場合、噴火3時間で東京都内の鉄道の大部分がマヒする恐れがある、というのである。そしてこれら火山灰は、東日本大震災で生じた災害廃棄物の約10倍に当たる4.9億立方メートルに上り、復興には相当の時間がかかると言うのである。
噴出された火山灰の重みで家屋倒壊の恐れがあるため、山梨、静岡両県などの住民は、早期避難が必要であると言われる。山梨、静岡両県と神奈川県を中心とする「富士山火山防災対策協議会」の広域避難計画でも、家屋倒壊の恐れがある場合は、近隣の頑丈な建物に逃げることを求めている。50センチ以上の降灰が想定される山梨県富士吉田市は、各家庭にゴーグルやヘルメットなどの準備を呼びかけている。
世界的に美しい名山として知られる日本の霊峰―富士山がこのような恐ろしい威力を蓄えていることを筆者は初めて知り、実に驚きに堪えない。そこで、富士山についてあまり知られていない一面を、少し調べてみることにした。
江戸時代中期の1707年(宝永4年)12月16日に富士山の大規模な噴火があった。火山灰は偏西風に乗って16日間も富士山の東側に降り続き、現在の東京都心部までに達した。噴出した火山灰の量は17億立方メートルに達したという。これが富士山の記録された最初の大噴火であり、また、最後の噴火でもあった。
時は既に300年もたっている。もうそろそろ、富士山が再度動き出す可能性があるのかもしれない。油断は禁物である。
今まで富士山の灰煙が届かないと思われている地域にも、影響が及ぶ可能性が十分にあると認識すべきであると、関係当局が注意を呼び掛けるようになった。関係市町村の地域防災計画では、降灰が30センチ以上と想定される範囲を避難対象エリアにしているが、具体的な地区や避難先までは示されていない。噴火当日の天候によっては、被害地域が変わるからである。
日本はいま、コロナ禍の「第2波」に直面し、この未経験の疫病に如何に対処すべきかという緊急の課題に全力を尽くすのは当然である。しかし同時に、もう一つの我が国自身の霊山とも呼ばれる富士山の、いつでも起こり得る地穀変動の可能性についても、決して注意を怠ってはならないとの認識が必要であろう。
今どき ニッポン・ウォッチング Vol.182
早氏 芳琴