コロナ禍は東京の一極集中回避への 教訓となるのか?!
東京は日本の首都であり、人口は約1千2百余万人あり、人口密度は海外諸大国の首都と並ぶ高い数値で、一極集中の状態が続いている。国の首都に人口が集中するのは、決して珍しいことではなく、当然の現象でもあるが、東京の場合、地方と比べると、その一極集中の状態は余りにも突出し、それによる大きなひずみを抱えている。関係当局はここ数年、様々な改善策を講じてきたが、残念ながら期待する成果を収めていないのが実状のようである。
人口の一極集中がもたらす最大の弊害は、災害であると言われる。特に日本のような自然災害の多い国では、ひとたび災害が起こると、人的被害は言うまでもなく、家屋や財産の損失も甚大となる。また、新型コロナのような感染症が一旦起こると、なかなか終息させるのは難しくなる。人々が大勢集まる所では感染症が猛威を振るうのである。今回のコロナ禍で経験した人口集中のもたらす災厄が如何に恐ろしいかを、大多数の都民は実感したに違いない。
幸いここ数年東京を脱出する人は徐々に増え始めているようだが、人数はまだまだ微々たるものである。総務省の統計によると、昨年の7月からの5カ月間に、連続して東京からの転出者は、その他の市町村からの東京への転入者を上回っているが、人数は約1万7千人程に留まっている。この数値は一昨年の台風19号時の広域避難の呼びかけの結果であると言われている。
今回のコロナ禍による影響がどのような結果をもたらすかは、まだ未知数ではあるが、東京の人口減少に良い影響があればと、期待される。
日本の地震に関する研究機関では、今後30年以内に約70%の確率で、首都直下地震や南海トラフ地震が起こる可能性があるため、都民は前もって準備が必要であると呼びかけているが、人々の関心度は未だ高くないようである。
また、東京の下町で大規模な洪水が起こる前に、250万人の避難が必要であるとも言われるが、政府中央防災会議の作業部会は、いまだ具体案を示していないのである。これは大都市における人口密集の回避作業が如何に難しいかを示しているといえよう。そこで、今回のコロナ禍が人口密集地に起こり、その蔓延の速さと被害の悲惨さを目にした都民に、何らかの経験教訓として認識されるようになれば、と期待されるのである。
日本は科学技術の発達した先進国である。今回のコロナ禍にみるテレワークの活用や普及、加えて今後のより先進的な技術革新によって、人々は必ずしも大都市に集中する必要はなくなってきている。
東京のような一極集中の弊害を迅速に改善しようとするなら、今回のコロナ禍の経験教訓をしっかりと受け止め、人口密集の弊害の改善に、更なる努力を注ぐべきだろう。
今どき ニッポン・ウォッチング Vol.197
早氏 芳琴