「もう俺なんて××歳だし、別にやりたい事や夢なんてないよ」。こんな風に仰る年輩の方が案外多い。いや、まだまだお若いのに勿体ない!と思うのだが、当人たちはすっかり冷めきっていて、これからの人生を楽しもうという気分ではなさそうなのだ。
四十歳の敏腕弁護士、ピーター・バニングは愛する妻モイラをはじめ、ジャックとマギー、二人の子供にも恵まれ仕事も順風満帆。しかし、ひっきりなしにかかってくる電話と取引を最優先し、家族と過ごす時間を蔑ろにして呆れられていた。
クリスマス休暇を取り、生まれ故郷のロンドンに帰るがそこでも仕事に没頭して険悪な雰囲気に。ある晩、妻のモイラと祖母ウェンディと共に式典に出かけ帰宅するとジャックとマギーの姿はなく、『君の子供たちが助けを求めているぞ』と脅迫状があった。信じられないことに、そこには“フック船長”と署名が…なぜおとぎ話のようなことが起きたのかと混乱するピーターに、ウェンディは「忘れたの?あなたこそピーター・パンなのよ」と告げる。
お腹まわりのでっぷりした、冴えない見た目の中年男性。超保守的で飛行機が落ちないかと心配し、子供たちには小言ばかり。こんな大人のピーター・パンなんか見たくない!と最初は心底がっかりしてしまう。が、ネバーランドに戻り、かつての自分と同じく永遠に歳を取らない迷子の子供たちと過ごすうち、ピーターは少年の心を、夢見る気持ちを取り戻していく。その様子を見ているだけでワクワクし、忘れていた子供時代のイマジネーションが蘇るようだった。
また、あらためて題名でもあるフック船長に目を向けると、ゴロツキ海賊たちの中でなぜ一人だけ教養や品があるのだろう、彼はどこからやって来たのだろう?と疑問が浮かんだ。必要悪の立場なのはわかるものの、ぜひもっとフック船長の過去にクローズアップして欲しかった。
いくつになっても遊び心を忘れずに、思い切り夢を見られる大人でいたいと思う。もちろん、よそ様に迷惑をかけない、良識の範囲内での話だが。
加西 来夏 (かさい らいか)
映画は年間100本以上視聴、訪問国は39ヵ国~の旅する映画ラヴァー/ジュリア・ロバーツ演じるティンカー・ベルがとってもキュート!大人も子供も違う目線で楽しめる、いちおしの名作です。
シェアする