ガサガサガサっという音の後に、フギャー! という猫の叫び声。もしや、うちのチビでは? と心配になって見に行くと、果たしてチビが白黒猫に追い詰められているところだった。私よりも先に現場に駆け付けた夫が、白黒猫を追い払った。チビは尻尾をボワボワにして家の中に駆け込んだ。「子供のケンカに親が出る」そのものだが、まあいっか。
チビは外に出るようになってまだ4か月くらいの新人。外猫たちは皆百戦錬磨の猛者ばかりなんだよね。
この白黒とチビはすでに何度か顔を合わせている。チビが無邪気に近づいて行って、シャーっと怒られたりもしている。チビは大変懐っこく、誰にでも寄って行ってしまうタイプなのである。困ったもんだ。
逃げ帰って来たチビはやや興奮していたものの、ほどなく寝てしまった。シバかれてびっくりしたんだろうな。よっぽど疲れたのか、その日は夕方のご飯の時間になっても起きてこなかった。「チビ、ご飯食べないの?」と尋ねると、ようやくご飯のことを思い出したようで、二時間遅れで夕食。そしてまた寝てしまった。
翌朝、夫はチビと顔を合わせないまま出勤してしまったそうで、ちょっといじけている。いつもは朝の5時に夫を起こしに来るのだけれど、今朝はチビが来なかったという。ゆえに、チビはご飯も催促しなかったらしい。え、そうなの? 当のチビは、私の足元にくっついて寝ていたのだった。私が起きると、「お腹すいた!」と騒ぎ出し、モリモリとご飯を食べた。
チビの様子がいつもとちょっと違うので、夫は少し気になっている様子。でもご飯も食べていたので、私はあまり気にしていなかった。帰宅後、背中から尻尾を撫でると、「ニャン!」と妙な鳴き方をする。ちょっと声が大きくて、大人っぽい? というか。「なんかへんな鳴き方やな」と、夫も不思議がっていた。
翌日ようやく気がついた。チビは尻尾をケガしていたのである。あの鳴き声は大人声だったわけではなく、単に痛かったのね。ぜんぜん気づかなかったよ、ゴメン、チビ! 白黒に尻尾をガブっと噛まれたらしく、2か所に小さい穴が開いている。牙が刺さった跡って穴が小さいし、血もあまり出ないんだよね。ケガに気づくまでに2日もかかるとは。飼い主失格!
でもさあ、猫って具合が悪いのを表に出さないんだよね。今になって思い返すと、いつもより元気がなかったし、いつもより寝てたけど、ご飯はちゃんと食べてたんだもん。隠れたりもしてないし。ダッシュが弱いとか、あんまり遊びたがらないとか、そこは夫に指摘されるまで気づかなかった。今回のことでよく分かったけど、人間って「願望」で現実を見ているのですね。
とりあえず傷口を消毒して、外に出さずに様子を見ることに。5日目に膿が出てちょっとびくっりしたけれど、おかげで化膿せずに済んだ。その頃にはチビもすっかり元気になっていたので、医者には連れて行かなかった。ひどくならなくて良かった良かった。
その後、白黒は見かけていない。チビよ、次回は近寄ってはアカンよ!
No.236
相原光(アイハラヒカル)
フリーランスライター&翻訳
群馬県出身、早稲田大学卒業。2008年結婚してハワイに移住。夫は寿司シェフ。2012年4月双子猫パンとマーチを連れてハワイ島に引越。8月に玄米寿司とムスビの持ち帰り店「DRAGON KITCHEN」を夫婦でヒロにオープン。現在ライター兼寿司屋のお手伝いとして活動中。姉は漫画家の花福こざる。
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