大学時代の思い出。男女数名でイベントに参加した後、皆であるメンバーの家に泊まり、全員が1階の居間で雑魚寝をした。真夏なのに寒気がして眠れないでいると、深夜に2階から数人がバタバタと階段を昇り降りして玄関から出て行った。ああ、上にご家族がいたのか、挨拶もせずに失礼したなと翌日謝ると「いや、あれね。違うの。うち、“いる”んだよね」。
韓国に実在する、廃業した精神病院“コンジアム(곤지암)”。多数の入院患者が謎の死を遂げた、院長が行方不明、など不気味な噂が広まり、面白半分で肝試しをする若者が大勢いた。過去には消息を絶った者もおり、様々な異常が起こるという。ここに潜入して生中継をすれば話題性は抜群、万単位の視聴者を見込め、それに伴い多額の収益も!と目論んだ人気動画チャンネルの主宰者ハジュンは、素人の男女を集めていざ院内の撮影に臨むが・・・。
魔女伝説の残る森でビデオカメラを片手に探索する“ブレア・ウィッチ・プロジェクト”や、家で起こる不可解な現象を固定カメラで記録した“パラノーマル・アクティビティ”などドキュメンタリー風の作品は今までもあったが、本作はドローンやGoProなど最新のテクノロジーを駆使して廃病院をくまなく撮影、リアルタイムで配信するという設定で、まるで今まさにYouTubeを視聴しているかのような臨場感を味わえる、流行最先端のホラーだ。
最近お気に入りのホラー系動画チャンネルがあり、ドアが勝手に開く、居るはずのない女性の声が入り込む、あり得ない場所に手だけが映る-そんな怪現象が多発する自宅の様子を日々配信している。かつて自分も奇妙な体験をしたのでこのような事象については肯定的に捉えており、劇中の出来事ももしや…と想像が膨らんだ。
“心霊スポットに行ってみた”系の動画は実際に人気が高い。現地には絶対に行きたくないが、安全な場所から楽しみたいという自分のような人間にとって、こんなリアリティを盛り込んだホラーは堪らないだろう。
(日刊サン 2020.4.24)
加西 来夏 (かさい らいか)
映画は年間100本以上視聴、訪問39ヵ国〜の旅する映画ラヴァー/外出自粛の中、父が仕事仲間とインターネットを繋いで飲み会をしていました。たとえ画面上でも人との触れ合いって大事だよなぁ~とネット社会の恩恵に感謝です。