ドアマンに迎えられ入店した瞬間、あまりの眩しさに目を瞑った。右を向いても左を向いても煌々と、いや、神々しく輝くダイヤモンドたち…親友の婚約指輪の下見で一緒にハリー・ウィンストンを訪れたのだが、あの強烈な体験は未だに忘れられない。
ニューヨークのキャバレーで働く、売れっ子歌手のローレライ(マリリン・モンロー)とドロシー(ジェーン・ラッセル)。片やリッチな男性が大好きで天真爛漫、片や貧乏でもハンサムな男性が好きな姉御肌、と正反対の価値観と性格の持ち主だが二人は大親友。ローレライは望み通りに大富豪ガスと出会い、パリでの挙式が決まったものの、彼女をよく思わないガスの父親によって邪魔され、ガスはニューヨークに留まることに。代わりにドロシーと豪華客船で先にパリまで船旅をすることになるが―。
マリリン・モンローといえば、ホルターネックのワンピースが地下鉄の風でめくれてしまう“七年目の浮気”の場面が思い浮かぶ方も多いだろう。が、艶やかなピンクのドレスを纏い、タキシード姿の男達に抱えられて歌う『ダイヤモンドは女の親友』はそれに負けないくらいインパクトが強く、最高にグラマラスかつ可憐で、まるで彼女自身が歌詞のダイヤモンドそのもの。
昨今では男女平等や性の多様性が広まり、およそ七十年前に公開された本作のローレライは、そのしたたかさや魔性の面が一見『女性らしさ』を押し売りしているように見え批判もあるかもしれない。
しかし、自分の欲求に正直に生き、男性も女性も分け隔てなく良いところを褒め、頭の回転も早い、そんな美人を嫌う人間などいないはず。「寝るときはシャネルの5番だけ」と言ったマリリン同様、ジェンダーも時代も超越して愛されるキャラクターであり、こんな魅力的な人に少しでも近づきたいと憧れさえ抱いた。
6月1日はマリリン・モンローの誕生日。36歳の若さで亡くなってしまったが、映画の中の彼女は半世紀以上経った今も燦然と輝き続けている―そう、ダイヤモンドのように。
加西 来夏 (かさい らいか)
映画は年間100本以上視聴、訪問39ヵ国〜の旅する映画ラヴァー/ダイヤモンドの値段を見て、あ、新車の方がいいなと思ってしまった自分。色気のかけらもない…。