私たちはみんなそれぞれが人生のドラマを生きている。電子書籍の出版でハワイで100人の方に人生についてのインタビューをしていた時も取材したハワイ在住ロバート。
彼はベトナム戦争の際も戦場ドクターとして多くの人たちの命を救ってきた人だ。そのロバートが病気になり余命いくばくかと聞かされた時、ニューヨークからハワイへと飛び、彼に会いに行った。ロバートとの最後の日に起きた、奇跡のお話。彼が語ってくれた実話のストーリをもとに、今日は書こうと思う。
ベトナム戦争に赴き、戦地で疲れ果てていた時。夕暮れに海沿いを歩いていた。疲労困ぱいしてきれいな海を見てもまったく何も感じなかった。放心状態になりかけていたそのとき、アーミーブーツに「カチ」っと、なにか金属類が触れた音がした。
ああ…、踏んでしまった。地雷だ。数秒、数十秒…やがて1分が経過して。しかし、まだ自分がいきている。そっと足元にある砂をかき分けてみると、出てきたのは銅のような、あるものだった。ゆっくり拾い上げた。「なんだこれは?」中国語らしいものが書かれてる。地雷じゃなかったんだ。
今、とっさに身に起こった現実が時間とともにじわりじわりと自分を包み込み、やっと時間差で状況が理解できた。気づくと泣いていた。戦地にきてずいぶんたつが、何が起きても泣いたことはなかった。はじめて泣いた。しばらくすると、目の前の景色に色がついてきた。よくみるとなんて美しい景色なんだ。ベトナムの海岸で故郷、ハワイの海を思い、家族、友人、大切な人たちの顔が次々浮かんできて、涙が溢れた。
過酷をとうに越した戦地での生活は、心を完全に麻痺させていて死ぬことはもう恐れていなかった。しかし、自分は心の底では生きたいと感じていたんだ。そのことに気づかされる涙だった。ああ、生きてる! 生きたい!
それからの日々、激しい戦闘もヘリからの救出も、このお守りとともにあった。これのおかげでまたハワイに戻ってこられたんだよ。命の共にあったこれをチズに持っていてほしい。
そう言って、ロバートは夢中で話を聴いていたわたしの手のひらにそっと、その大切な「お守り」を置いてくれた。わたしは一瞬、目を疑った。そこにはこう書かれていたからだ。
“天保通宝”…昔、社会の授業で習った江戸時代のお金だ! 「ロバート! これは日本のもの! 江戸時代のお金だよ!」
彼を救ったのは、海を渡り100年余りの時を超えてベトナムの海の沿岸にたどり着いた江戸時代からの日本のお金だったのだ。奇跡だと思った。全てが一つにつながった。
笑顔で別れたその日がロバートとの最後の日になった。
人生には不思議なことがたくさん起きる。一つ一つが奇跡で、決して偶然ではない必然でつながっている。私たちは奇跡を生きてる。生かされてる。今日もありがとありがとう。
私の旅ストーリー
大森 千寿
NY在住。香川県高松市生まれ。アーティスト・作家・アートセラピスト・米国NLP協会認定マスタープラクティショナー・現代レイキマスター。NY・ハワイ・日本の3箇所にアートスタジオを構え活動。著書に、amazon電子書籍「ハワイに不動産を購入して人生10倍楽しむ方法」「ハワイで聞いた! 32通りの生き方(第一弾)」「人生の冒険」がある。NYで新しい扉を開く2日間プログラムやニューヨーカーと行く穴場ツアー、アート最前線ガイドなど開催中。 www.chizuomori.com ameblo.jp/adamwestonart
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