「××航空××便××行きは機械系統のトラブルのため欠航となりました」。空港に到着して急にそんなアナウンスが流れたら、おそらく多くの人が「勘弁してよ!」と思うはず。周囲では、明日は大事な客先でプレゼンテーションが、出張が、本社会議が、と阿鼻叫喚。しかし自分は特に予定も無かったので、航空会社がどのような対応をしてくれるのか楽しみに身を委ねた。
ホエールウォッチング |
結果、帰国の便を待つ間、シドニーから南下してゴールドコーストのホテルに2泊(無料)させてもらった。実は予算の都合で行けなかった都市で、まさに“棚からぼた餅”の状態。サーファーの聖地として有名で、ちょうどザトウクジラが見られる期間だったためホエールウォッチングを楽しめた。風が強くボートはかなり揺れたが、クジラのダイナミックなジャンプを間近でばっちりと鑑賞出来て大満足。
ジェノラン・ケーブス |
また、シドニーではジェノラン・ケーブスという世界最古の鍾乳洞へ。鍾乳洞自体にも興味はあったが、1番見たかったのはここにある『ストロマトライト』。約37億年前から存在する藍藻というバクテリアの1種が長い年月をかけて何層にも堆積し岩石となったもので、彼らが光合成を行い、酸素を排出したおかげで生命が進化したといっても過言ではない、ロマンの詰まったお宝である。が、残念ながら落石のため立入禁止で見られず・・・。
coffin bay産の牡蠣 |
落ち込んでいた気分を上げてくれたのは、生牡蠣!現地に長く住んでいる日本人に、こちらで生の牡蠣を食べても大丈夫でしょうか?と念の為確認したところ、ノロウイルスで食中毒になったという話はほとんど聞いたことがないという。さらに、シドニーは美食の街で、特に牡蠣は絶品だよ、とおすすめされ頂いたところ、こんなに美味しいなんて!と感激、1日で少なくとも20個を完食した。
飛行機のトラブルも、時に良い思い出となる。予定が詰まっている場合は臨機応変の対応が求められるが、経験値もアップ。ああ、それにしてもシドニーで食べた生牡蠣が恋しいー。
●加西 来夏 (かさい らいか)
訪問39ヵ国、好きな言葉は「世界は驚きと奇跡に満ちている」/強風で、成田着のはずが名古屋着ということも。せっかくなので、ひつまぶし弁当を食べてショッピングをしたいい思い出です。
(日刊サン 2020.3.05)