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コラム 神楽坂発 お身体へのお便り

【神楽坂発 お身体へのお便り】オーラルフレール(口腔の劣化)とは

 「秋雨や 身を縮めたる 傘の下高浜虚子」このところ東京では冷たい雨の日が多く、寒さが一段と厳しくなってきています。季節の移り変わりが平年より早く感じるのは年齢を重ねているせいでしょうか。11月の日々が清明な空気と天空の青で覆われ紅葉や冴え冴えとした月を愛でたいものです。

 年齢を重ねると残念ながら身体の臓器は老化していきます。老化が最も早いのが腸だそうですが、口腔の老化も適切なケアをしなければ劣化が激しい場所です。オーラルフレールという言葉をお聞きになったことはありませんか?滑舌が悪くなった”“物を飲み込んだときにむせるそんな経験が年齢とともに増えてきたと感じる方も多いかもしれません。

 これは口腔の衰えの兆候なのです。研究によれば、オーラルフレールの方は健常な方に比べると死亡率が2.1倍、介護が必要になる率は2.4倍という結果が出ていますので、侮ることはできません。早ければ50歳代から、60歳代では4人に1人の割合でプレオーラルフレール(オーラルフレール前段階)がみられるそうです。

 若い世代だから安心というわけでもありません。30歳代後半から歯周病の方が増加してくるからです。では虫歯や歯周病さえ治療できていれば大丈夫なのでしょうか? もちろん機能する歯がどれだけ残っているかは大切な要素ではありますが、歯が残っていても口の筋力が衰えると咀嚼能力や飲み込むための嚥下機能が落ちてしまうそうです。けれどご安心ください。フレールの小さなサインに早めに気づいて適切な対処をすれば、再び健康な状態に戻れる可能性があるそうです。

 では私たちがオーラルフレールを予防するためにできることは何でしょうか?

 ①食事(しっかり噛んでよく食べる)②運動③社会参加が他のフレール予防と同じように重要な要素と言われています。足腰の筋肉の衰えは口腔の衰えにも関連し、社会参加で食事環境がよくなれば食力が向上し、話す機会が増えれば滑舌にも有効なのです。新型コロナの影響で人と一緒に食事をする機会が減ると口の周りの筋肉の動きが悪くなりますので、一人の食卓であっても意識して唇、舌、喉などが協調して働けるようにしましょう。舌と唇の働きレベルを知るには「パ・タ・カ」テストが良いそうです。パパパなどそれぞれできる限り早口で5秒間に30回以上言えれば問題ないそうです。オーラルフレールになった方でもパ・タ・カを3か月ほど訓練すればかなり改善するそうですので、ご心配な方は試してみましょう。歯磨きの時に頬を動かすブクブクうがいを数十秒加えることも効果的だそうですので、今から試してみたいものですね。

 オーラルフレール研究の第一人者飯島勝矢教授によれば筋肉は裏切らないかわりに怠けていれば必ず衰えるので、ご自身のできることを見つけて努力を継続してください、とのことです。

神楽坂発 お身体へのお便り No.111

安田祥子   Akiko Yasuda

株式会社jast代表取締役会長 

統括メディカルアドバイザー、フリーライセンスドクター、「農林水産省 産学共同プロジェクト」メンバー

最愛の娘の突然の死をきっかけに、健康は当たり前のものではなく、自らの手で守り育むものと痛感し、分子生物学や医学などを学ぶ。2013年(株) jastを設立し家庭と医療機関を結ぶ架け橋としてのアドバイザー育成に取り組む。これまで200件以上のクライアント様の健康・医療・日常生活のご相談に応えるとともに、教育部門JAMAで主席講師を務め分子生物学の観点から細胞に働きかける栄養素や最新の遺伝子研究など多岐に渡る講義を行う。数多くの機関誌への執、講演会、セミナーなども行っている。

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