日本では日中の気温が35℃を超える猛暑の日々が続き炙られるような暑さが続いています。昔は蝉取りの籠を持って走る子供たちの姿が当たり前の日常でしたが、今では外で遊ぶと熱中症のリスクを抱えることになります。けれど夕刻を過ぎて月が上るころには蚊遣りを炊いたベランダで涼風を楽しめます。
題名を忘れてしまい著者の方には失礼ですが、とある著作で「瑠璃の月」という言葉を目にしました。濃紺の空に輝く白銀の月は周りの色に溶けて瑠璃色にも見えます。画家が絵筆で細密な色彩を描きだすように多様で多彩な色を表現する日本語は、繊細な文化遺産ともいえるかもしれませんね。世界の各地で受け継がれ洗練された民族特有の言語が、お手軽な新語に置き換えられてしまうのは悲しいことかもしれません。
医療の用語は文学とは異なり、難解で無粋な言葉が連なります。けれど、文化の担い手であるヒトが健やかであることは文化が健全な発展を遂げるための重要な要素です。今回は日本の厚生労働省から7月20日に発表された薬剤に関する重大副作用情報をお届けしておきましょう。
比較的一般的に利用されているコレストロール低下薬のスタチン(商品名リピトール、リポバス、リバロ、メバロチン、ローコール、クレストールなどなど、分類で10項目あります)が引き起こす副作用に追加項目として出された内容です。スタチンは肝臓でのコレステロール合成を抑制し、血液中のLDLコレステロール(悪玉と呼ばれています)を低下させることで動脈硬化によって起こる心筋梗塞や脳梗塞などを予防する薬剤です。健診で脂質異常症と診断された方に処方され、頻度は稀ではありますが、横紋筋融解症や肝機能異常などは従来から報告されていました。
今回、重大副作用情報として重症筋無力症が追加されました。重症筋無力症は末梢神経と筋肉の接合部が自分の抗体によって破壊されてしまう自己免疫疾患で指定難病となっています。筋力低下や疲れやすさ、そして眼瞼下垂(瞼が垂れてします)などが目立った症状だそうです。スタチンなどをご利用の場合で、気になることがありましたら早めに担当のドクターにご相談ください。
日本では新型コロナ感染者数が少しずつですが増加傾向にあります。そんな中、同じ厚生労働省からゾコーバ(新型コロナ治療薬)の副作用情報にアナフィラキシーが追記されたこと、そして比較的安全と言われ処方されてきましたアセトアミノフェン(特にカロナールなど)に重大な副作用として肝機能障害やリンパ節腫脹などの過敏症状が遅発的に現れること、及びヒトヘルペスウィルスの再活性化を伴うことが多く、アセトアミノフェンの投与を中止しても発熱、発疹、肝機能障害などの症状が再燃することも記載されています。
ご不安があれば担当のドクターにご相談ください。
神楽坂発 お身体へのお便り No.119
安田祥子 Akiko Yasuda
株式会社jast代表取締役会長
統括メディカルアドバイザー、フリーライセンスドクター、「農林水産省 産学共同プロジェクト」メンバー
最愛の娘の突然の死をきっかけに、健康は当たり前のものではなく、自らの手で守り育むものと痛感し、分子生物学や医学などを学ぶ。2013年(株) jastを設立し家庭と医療機関を結ぶ架け橋としてのアドバイザー育成に取り組む。これまで200件以上のクライアント様の健康・医療・日常生活のご相談に応えるとともに、教育部門JAMAで主席講師を務め分子生物学の観点から細胞に働きかける栄養素や最新の遺伝子研究など多岐に渡る講義を行う。数多くの機関誌への執、講演会、セミナーなども行っている。
シェアする