古くは6~7月はシトシトと雨のそぼ降る梅雨でしたが、近年は梅雨の概念を覆すような激しい雨が降りかつ日差し強いために地球環境の変化をひしひしと感じるようになりました。世界情勢に目を向ければ、危うい均衡で成り立つ日常生活にあって意識の奥深い場所で心の揺らぎや不安を感じておられる方も多いでしょう。
日本では古来より海や川、山、樹木、岩そして身近な自然に神を見出し、謙虚に手を合わせる文化が受け継がれてきましたが、忙しい昨今ではそうした姿も稀になりました。「天地にあっては神と言い、人にあっては心という」室町時代に著された神道大意の中に見つけた一文です。こんな世相であるからこそ自然の中に座す神々に思いを馳せ周りへと優しい目を向けるゆとりを思い出させてもらえるのは自然との共存を紡いできた祖先からの贈り物かもしれませんね。
心が僅かでも蝕まれそうな時には、身体の健やかさが補ってくれるかもしれません。英国・ノーフォーク州で行われた被験者1万1996名の解析結果をご紹介しましょう。血中のタウリンやタウリン関連代謝物が多い方の場合、2型糖尿病の有症率が低く、糖濃度が低い、そして体内の炎症指標であるCRPが低いことが分かりました。また痩身にも有効と伝えています。タウリンの血中濃度が老化に伴って減少することはマウス、猿、ヒトで認められていて、マウスや猿ではタウリンの体内循環を増やすことで健康に生きられる期間の延長や中年猿の体調改善が報告されています。
タウリンはヒトも含めて真核生物の世界では最も豊富なアミノ酸の一つで、必須アミノ酸のメチオニンやシスティンから肝臓で合成されます。体外から食事で摂り入れる場合にはイカ・タコ・カキなどの魚介類に豊富に含まれていて、もともと魚介類を常食している日本人の場合欠乏することはあまり無いようです。タウリンは厚生労働省のe-ヘルスネットではコレステロール値を低下させる、インスリン分泌促進作用・高血圧症の予防、視力の回復などが示唆されています。
タウリンは処方薬としても利用されていますので、処方箋に副作用が記載されています。また、欧州食品安全委員会のHPにも副作用に関する記載がありますので参考になさるとよいでしょう。
疲労回復効果を期待して栄養ドリンクをご利用になる場合には過剰摂取(3本以上)にはご注意ください。ヒトがタウリンを直接補給することで健康改善や寿命延長効果などに対する研究は今のところ明確な結果が報告されていませんので、早まってタウリン含有サプリメントを過剰にご利用にならないよう研究執筆者は述べておられますので今のところは食事で補給なさることがよいでしょう。
基本的なアミノ酸をしっかり摂ることができる食卓を楽しむことこそ心にも身体にも栄養補給の原点となると思います。
神楽坂発 お身体へのお便り No.118
安田祥子 Akiko Yasuda
株式会社jast代表取締役会長
統括メディカルアドバイザー、フリーライセンスドクター、「農林水産省 産学共同プロジェクト」メンバー
最愛の娘の突然の死をきっかけに、健康は当たり前のものではなく、自らの手で守り育むものと痛感し、分子生物学や医学などを学ぶ。2013年(株) jastを設立し家庭と医療機関を結ぶ架け橋としてのアドバイザー育成に取り組む。これまで200件以上のクライアント様の健康・医療・日常生活のご相談に応えるとともに、教育部門JAMAで主席講師を務め分子生物学の観点から細胞に働きかける栄養素や最新の遺伝子研究など多岐に渡る講義を行う。数多くの機関誌への執、講演会、セミナーなども行っている。
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