「樹も草もしずかにて梅雨はじまりぬー日野草城」−6月に入ると日本では梅雨が話題に上るようになります。地球環境の変化によるのでしょうか。5月は気温の低い日が長く続き爽やかとは程遠かったのですが、ここ数日でやっと日差しが強くなり庭の花々も心地よさそうです。コロナ禍がやや落ち着きをみせ、お籠もり生活から少し開放されそうです。
炎暑を迎える前のひと時、ビヤガーデンなど外気に触れながら友人とビールを楽しむ方も増えるかもしれません。ついつい気分が高揚して酒量がオーバーになり、あとで肝臓の心配をなさることもありそうですね。
ご存知のように肝臓は少々ダメージを受けても身体に違和感がないため沈黙の臓器と呼ばれています。肝臓は解毒や再生、栄養素の合成など、私たちの身体が支障なく活動するための化学工場ですので、何らかの原因で大きな負荷がかかれば工場の操業が停止してしまいます。つまり、不具合のサインを出してくれないが故に気を配る必要がある重要な臓器なのです。
私たちが肝臓の状態を知るには健康診断で見つけるしかありません。健診結果をご覧になる場合には肝臓にある酵素の量―γGTPやALT、ASTなどの項目に注目してください。ざっくりお話すれば、ALTやASTは肝細胞などがどの程度壊れて炎症が起こっているかを調べています。特にALTは肝臓の状態が如実に分かりますので軽視は禁物です。ではγGTPはどうなのでしょうか?
γGTPは肝臓や胆管に含まれている酵素で肝臓の解毒に関わります。基本酒量が多いと高くなりますが、基準値が曖昧なこともあり高くても必ずしも肝機能に障害があると言い切れないそうです。但し高いままで放置するとアルコール性肝炎や脂肪肝、肝硬変や肝がんへと進んでいくリスクもあります。お酒以外に薬物は勿論、肝機能を守る目的でウコンサプリメントを長期継続してご利用の方の中にはかえって高値になる方もおられるとのことです。女性の場合、閉経後γGTPが高くなるケースがみられますが、これは女性ホルモンの分泌が減少することで脂肪やコレステロールの分解能力が低下し、その結果内臓脂肪がつきやすくなり脂肪肝によって数値が上昇するようです。肝臓専門のドクターによれば、3桁の場合には酒量を減らすアドバイスをなさるそうですが、“急に数値が上がった”“2桁でも徐々に上がり続けている“といった場合には肝臓のエコー検査がお薦めとのことです。検診前1週間程度節酒することで肝機能検査の数値が正常値になることもありますが、検査の意味が無くなりますので控えたいものですね。
アルコールを嗜まない方で肝機能に問題がある非アルコール性肝炎では運動と食事の改善が有効だそうですので、日常生活を見直してみましょう。
ウクライナと世界に平和が訪れ、人々が思い遣りに満ちた安寧な世になることを祈念いたしております。
神楽坂発 お身体へのお便り No.106
安田祥子 Akiko Yasuda
株式会社jast代表取締役会長
統括メディカルアドバイザー、フリーライセンスドクター、「農林水産省 産学共同プロジェクト」メンバー
最愛の娘の突然の死をきっかけに、健康は当たり前のものではなく、自らの手で守り育むものと痛感し、分子生物学や医学などを学ぶ。2013年(株) jastを設立し家庭と医療機関を結ぶ架け橋としてのアドバイザー育成に取り組む。これまで200件以上のクライアント様の健康・医療・日常生活のご相談に応えるとともに、教育部門JAMAで主席講師を務め分子生物学の観点から細胞に働きかける栄養素や最新の遺伝子研究など多岐に渡る講義を行う。数多くの機関誌への執、講演会、セミナーなども行っている。
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