▲元スペイン代表の世界的プレーヤー、イニエスタ選手(左)と対談したカズ選手
2020年のJリーグがいよいよ2月21日に開幕しました。早いもので今年創設28年目を迎えるJリーグ。私も仕事の関係で、東京・六本木のホテルで開かれた「Jリーグキックオフ・カンファレンス」に足を運びましたが、今年の注目は何と言っても、所属の横浜FCがJ1に昇格し、13年ぶりにJ1の舞台に帰ってくる三浦知良選手(52歳)です。カズ選手とイニエスタ選手(35歳、神戸)の周りには、報道陣が殺到していました。
52歳の圧倒的オーラ
コロナウィルスを警戒し、報道陣も全員マスク着用の厳戒ムードで開かれたカンファレンス。水色の半袖のユニホームにスパイク姿のカズ選手は、壇上でひときわ笑顔を輝かせていました。今年J1で戦う全18クラブを代表する選手が一堂に集合。選手たちの多くは20代前半で、一回り、いや二回り以上年の離れた選手の中に50代の“おじさん”が混じっても、堂々とした立ち振る舞い。漂うオーラと風格で他の若手選手をただただ圧倒していました。
まだ駆け出しのスポーツ記者だった99年の冬。私はカズ選手のクロアチア移籍を現地で取材したことがあります。その前年に日本はフランスW杯に悲願の初出場を果たしますが、カズ選手は直前合宿中に代表から外れ、無念の帰国。その年の冬に、一からの再起を目指し、海外の地にプレー場所を求めたのでした。
手袋外して挨拶
当時の東欧は情勢も不安定で、クロアチアも内戦の果てにユーゴスラビアから独立を果たしてから日も浅い時期でした。取材に訪れた首都・ザグレブの練習場は一面、真白な雪におおわれ、カズ選手も異国の若い選手たちに交じって、紅白戦に出場していました。日本ではヴェルディ川崎(当時)のクラブハウスに高級外車で乗りつけ、「キング」と尊敬されていた存在。私が取材でお世話になる旨、雪の中恐る恐る挨拶すると、その場ではめていた手袋を外し「よく来たね」とガッチリ握手をしてくれたのは強烈な体験でした。17歳でブラジルに単身渡り、プロ選手を目指したカズ選手の衰え知らずのハングリー精神をかいまみた瞬間でした。
▲会場には各クラブのブースが設置され、華やかな雰囲気に包まれました
Jリーグ元年からプレー
その後日本のクラブなど数チームでプレーし、今月26日で53歳の誕生日を迎える今でも日本人最年長のプロ選手として活躍。Jリーグが93年に創設されてからプレーし続ける唯一の選手です。今年も最年長ゴールの記録更新に期待がかかります。ピッチに登場するだけで、見ている人の心を震わす特別な選手として、今も日本で圧倒的な人気を集めています。
21年前の2月26日の誕生日はクロアチアで迎え、報道陣からバースデーケーキを送りました。当時32歳のカズ選手がいまだに現役とは誰が想像したでしょうか! その後私は記者の仕事を離れ、母となり娘を連れてハワイに滞在…と人生を歩みますが、ザグレブに2カ月間滞在し無我夢中で記事を書き続けた日々は、強烈な原体験となっていると感じます。
これまでも日本中の想像を超えた存在であり続けたサッカー界の先駆者・三浦知良選手。今年もどんなプレーや行動が「カズ劇場」で巻き起こるか、一人の観客として見続け、パワーを感じたいと思います。
竹下聖(たけしたひじり)
東京生まれ。大学卒業後、東京の某新聞社でスポーツ記者、広告営業として15年間勤務後、2012年〜2014年末まで約3年間ハワイに滞在。帰国後は2016年より、大手町のマスコミ系企業に勤務。趣味はヨガと銭湯巡り。夫と中学生の娘、トイプードルと都内在住。
(日刊サン 2020.2.22)