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デジタル版・新聞

川戸恵子のニュースコラム

新型コロナウイルス

 4月7日、東京とその近郊・千葉・埼玉・神奈川、そして大阪・福岡の7都府県にコロナ対応の特別措置法に基づいた「緊急事態宣言」が出された。

 

 世界の感染者がすでに100万を超える現在、各国の首脳が「第二次世界大戦以来の最大の試練」と指摘する中、日本は、花見やライブハウスで浮かれる人達の映像で「対応がゆるい」と欧米から批判されていたが、3月24日、オリンピックの1年延期決定、そして翌日の小池東京都知事の緊急記者会見後、がらっと様相が変わった、急激に感染者数が増加、小池知事は「オ-バ-シュ-ト(感染爆発)の重大局面だ」と訴え、週末の不急不要な外出の自粛、平日はできるだけ自宅で仕事を、と求め、「ロックダウン(都市閉鎖)などの強力な措置を執らざるを得ない可能性がでてくる」と非常に強い危機感をあらわにした。

 

 しかし官邸は躊躇した。一つは私権制限とのバランス、さらに交通・流通や企業活動を完全に停止させると「弱った経済が完全に留まってしまう(麻生副総理)」という経済とのバランス。ただ小池発言は社会で増幅、早く宣言を出せという言葉が高まった。海外からも医療崩壊のNYの二の舞になると言う指摘が相次いだ。

 

 ただ、以前にも書いたようにこの特措法は海外のようなロックダウン・都市封鎖の法的権限はない。強制力も無ければ罰則も無い。ただただ安倍首相曰く「接触機会をそれぞれが最低7割、極力8割を減らしてほしい、そうすれば緊急事態を1ヶ月で脱出できるから」という御願いベ-スなのだ。

 

 だから、海外のメデイアからは実効性が疑問視さする報道が次々出てきている。ロイタ-通信は「宣言を出すのが遅すぎる」。フィガロは「現実には見せかけだけ。在宅を強制されないし、自粛要請に従わなくても企業は処罰されないから。」AP通信はクラスタ-対策を中心にしてきた日本の戦略は困難になってきている」等々。でも日本は強制力も罰則もないのだ!

 

 だから、本当に一人一人の心構えを変えることにつきる。要は「3密」(換気の悪い密閉空間、人が密集する場所、密接した近距離での会話)を徹底的に避けること。手洗い。咳エチケット、それがすべて。

 

 宣言発出があけて今日、さすが日本人!駅前はがらがら、休業の店や百貨店も見事に増えた。このままの状態が一ヶ月、続けばいいのだが・・・

 

 国会。ついこの間まではマスクを着けているのが記者、着けていないのが国会議員だったが、今は全員マスク着用。緊急事態宣言の会見も広い大ホ-ルで各社1名+抽選で選ばれたフリ-の記者10名が2mおきくらいに座って質問した。自民党は役員会や代議士会も中止、野党はTV会議を開いている。国会も宣言直後の8日こそ休んだが、国会審議そのものは国民の代表であり、休会にすると必要な措置がとれなくなるという立場から続けるべきという意見が大半。当然ここもなるべく広い部屋に換え、一人おきに着席。

 

 選挙は国民の権利だから、よほどのことが無い限り実施。静岡県4区ではまもなく衆議院議員の補欠選挙が予定されているが、様変わり。大規模な集会はもちろん自粛して中止。事務所開きも大勢は集まれず気勢が上がらない。握手はダメで肘タッチ?

 

 人と人をなるべく接触させないために「在宅勤務」「遠隔医療」「遠隔教育」等々、AIを使っての様々な対応策が実行されている。外交も、G7のリ-ダ-が、G20の外務大臣達がTV会議でコロナ対策を話しあったり、一方どうしても集団で作らざるを得ないからとTVドラマの制作の中止が相次いでいる。

 

 今回の新型コロナウイルスの世界的な蔓延で政治・経済・社会は大きく変わるだろう。当然心配もある。「ソ-シャルデイスタンス」は今は緊急避難で必要だが、これが当たり前になるとどうなるだろうか。G7,G20のTV会議はやはり自国の主張の言いっ放しで、何かをまとめる、ということにはほど遠い状況だったようだし、「オンライン教育」も知識は伝えられても人と人とのつきあいで人間は成長するという過程が抜け落ちてしまう。国境封鎖・都市封鎖が相次ぎ、グロ-バルな世界から自国第一主義へ。これが続けば経済や社会のあり方も当然変化するだろう。それぞれの国の政治もリ-ダ-のコロナ対応への評価で変わるだろうし、通信ですませ、人の往来は減ったままになるかもしれない。

 

 まずは感染をストップすることだが、その先も見据えて我々は行動しなければ、と思う。

 


川戸恵子 (かわどけいこ)

TBSテレビ・シニア・コメンテ-タ-。TBS入社後、ニュ-スキャスタ-を経て、政治部担当部長・解説委員さらに選挙担当として長年政界を取材。そのほか、これまでに自衛隊倫理審査会長、内閣府消費者委員会委員などを歴任。現在、TBSNEWSで週一回の政治家との対談番組を制作。また日本記者クラブ企画委員・選挙学会理事。


 

 

(日刊サン 2020.4.11)

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