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デジタル版・新聞

川戸恵子のニュースコラム

コロナと映画館

「●発熱者はダメ!●入退場時には手洗い・アルコ-ル消毒を!●マスク着用!●上映中、口を開けて、叫ばない!笑わない!●けっして後ろを振り返らない!」これは、再開された映画館入場者への注意書き。やれやれ!

 ともあれ、やっと映画館が再開された。暗闇に身を沈め、スクリ-ンの中にはいりこむ、何にもかえがたいひとときだ。自粛中はネットで何本映画をみたことか。でもやっぱり違うんだな~、と思うのは少数派なんだろうか。というのはコロナ以前から、世の中、映画は映画館ではなくネットの動画配信で観る、というのがどんどん主流になってきている。

 世界の映画祭は映画の売り込みの場だが、去年のアカデミ-賞ではNetflix社の作品が最多ノミネ-トされ、Netflixが配信する『ROMA/ローマ』は作品賞こそ逃したものの、監督賞、外国語映画賞、撮影賞の3冠に輝いたことが話題をさらった。もっとも、延期になった今年のカンヌ映画祭は「映画館で観てこその映画」と、上映について厳しい注文をつけ、Netflix社が作品を引き上げるという騒動もあったが、それだけNetflix社の作品の質・量・宣伝力が見逃せなくなっているのは事実。ちなみにコロナの影響でNetflixの有料契約者は今年1~3月期で全世界では1577万人増え1億8286万人、日本を含むアジア・太平洋地域でも360万人増えたという。

 ただ、やっぱり大きなスクリ-ンでみるのは別物。あのスピルバ-グ監督は「ストリ-ミング(映像配信)映画と劇場公開映画とは違う。いったんテレビのフォ-マットにコミットしたらそれはテレビ映画だ」と言ったそうだが、よくわかる。

 そんな中、ミニシアタ-(小規模映画館)を経営している友人から、こんな話を聞いた。彼女はベルリン・カンヌ・釜山・ベトナムなどの映画祭に出かけては、目にかなった映画を買い付け、自分のミニシアタ-で上映しているパワフルウ-マン。「ただでさえ、シネマコンプレックス(大規模でスクリ-ン多数。大手系列の映画を一斉に上映)が幅をきかせ、経営が苦しくなっていたところに、今回のコロナでもう大変!ドイツなんか真っ先に文化大臣が『アーティストは今、生命維持に必要不可欠な存在』と宣言、手厚い援助を出しているのに、日本は映画館は文化芸術基本法にも入っていない!でも、つぶされるもんか、負けない!って、いろんなことをやってがんばっているわ。」

 その一つが「ミニシアタ-・エイド基金」。クラウドファウンデイングを利用、ポイントカ-ドとも連携して1ヶ月間で3万人近くの人から3億3千万円もの寄付が集まったという。呼びかけ人の一人は「それだけ多くの人が動いたのは『ミニシアタ-』という場がずっと、誰かの人生を変えたり、支えてたりする経験を作り続けてきたからにほかならない、と改めて気づかされました。」と報告書に書いている。

 もう一つ、面白いやり方だなと思ったのは、想田和弘監督と配給会社が始めた「仮設の映画館」。まず上映予定だった12本から映画を選んで、ネット上の「仮設の映画館」でオンラインで観てもらう。そしてその鑑賞料金1800円を「本物の映画館」の興行収入と同じくそれぞれの劇場と配給会社+制作者に5:5で分配されるという仕組み。想田監督は「僕らは常に映画館で観てもらうためにこそ、映画を作ったり届けたりしてきましたから。本来ならば、満員の映画館でワイワイガヤガヤ、『精神0』(想田監督の作品)を観ていただきたいのです。」「しかし現在は非常時です。ここはインターネットを最大限に活用し、しのぐしかないのだと覚悟しています。少なくとも座して死を待つつもりはありません。」「コロナ禍が収束したあかつきには、本物の劇場で『精神0』を改めて公開することを目指しています。そのときはぜひ、“仮設の映画館”でご覧いただいた皆さんも、お近くの劇場に足をお運びいただきたい。そしてオンラインで観るのとは全く別の経験をして、改めて『映画館っていいもんだなあ』と、実感していただきたい。感染リスクを気にすることなく、トークイベントなども思い切りふんだんに実施したいと考えています。やはり人間には「集う」ことが必要なのだと、集うことが自由にできなくなった今、切実に感じています。」と言う。同感!

 

 


川戸恵子 (かわどけいこ)

TBSテレビ・シニア・コメンテ-タ-。TBS入社後、ニュ-スキャスタ-を経て、政治部担当部長・解説委員さらに選挙担当として長年政界を取材。そのほか、これまでに自衛隊倫理審査会長、内閣府消費者委員会委員などを歴任。現在、TBSNEWSで週一回の政治家との対談番組を制作。また日本記者クラブ企画委員・選挙学会理事。


 

 

(日刊サン 2020.6.12)

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